【2020年上半期 映画振り返り】今年も映画愛を語ります!

コラム

今年も毎年好評の映画コラムの季節がやってきました!
当社一の映画好き「F」が語る、2020年上半期の映画総評です。

今年もかなりの長文です…。それではお楽しみください!

2020年上半期の映画振り返り「今年は今のとこ34本」

何の話かと言えば、今年劇場で私が観た映画の本数だ。

てめえの観た映画の本数が何なんだって話だが、今年の上半期の振り返りがお題となると、コロナの影響の話は避けられないわけで、端的にコロナ前と比較するなら例年の本数との比較かなと思った次第だ。
じゃあ昨年の今日(10/10)までの本数はというと54本。コロナ禍以降は7割経済になるなんて聞くが、昨年比6割強と考えるといい加減な予測じゃなさそうに思う。

せっかくだから今年の頭から順繰り状況を思い返そうと思う。

まず1月の頭から2月終わりくらいまではかなり熱い2か月だった。
何が熱かったかというと、まずはアカデミー賞。毎年日本ではノミネーション作品を事前に観れることはあまりなく、大体の作品が受賞式後の公開になることが多い。
ただ今年は、2/10の受賞式前に作品賞ノミネート9作品のうち「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」、「1917 命をかけた伝令」を除く7作品が既に公開されていたのだ。事前の評判を仕入れるだけでも面白いっちゃ面白いが、やっぱり実際に作品を観てから臨むアカデミー賞受賞式は個人的な思い入れが入る分、スリリングになる。

特に今年は外国語枠になる韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞するという歴史的な年でその盛り上がりも凄かった。受賞式当日、仕事の休憩時間に受賞式どうなったかなあなんてスマホの画面を表示した瞬間、大量のLINEメッセージ件数。「これは何か起きてる…もしや!」と思い、すぐさま受賞結果を見てパラサイトの受賞に思わず叫んだりもした。

そんなパラサイトを始め1~2月は、自動車の流れ作業を導入し安価な自動車販売を実現したフォード・モーター・カンパニーが自社のブランドイメージを上げるためにル・マン24時間耐久レースに参加し王者フェラーリに戦いを挑む「フォードvsフェラーリ」(vsフェラーリというよりフォード社内での戦いが話のメイン。組織に属する人には共感度が高いであろう色々な軋轢の中で信念を貫く主人公に男泣きする作品)、

ナチス政権下のドイツでイマジナリーフレンドのアドルフ・ヒトラーに支えられながら立派な兵士を目指している10歳のジョジョ少年が母親の匿うユダヤ人の少女エルサと出会い、彼女との交流を通してそれまで常識、正義と信じていたものの歪みに気づいていくコメディ映画「ジョジョ・ラビット」(題材に対してコメディという体裁を取ったことで賛否が分かれる作品。当事者の心情を考えた時、コメディとして扱う題材ではないとする意見は良くわかる。ただ個人的には決して「忘れる」という事でなく、二度と繰り返してはならない出来事として認識しつつコメディという形に描ける所まで「成長」したと信じたい。とても「成長」したと言える世界ではないかもしれないがこの作品が「忘れた」ことの証拠でないことを我々自身の行動で証明するしかない。)、

家族を失って傷心している主人公が彼氏に誘われて訪れた北欧の小さな村でとんでも祭りに巻き込まれるホラー映画「ミッドサマー」(全編輝くように明るい画面作りに示されるように従来のホラー映画の決まり事を覆していくのが面白い。通常ホラーはキャラクターが置かれた「場」からいかに逃げるのか、それを追手がどう阻止するのかに緊張のポイントを置くがこの作品では主人公たちは「場」から逃げない。逃げない理由をうまく設定している、むしろこの異界こそが…いやこれ以上は言うまい。知らないほど楽しめる作品。)、

アサド政権反対派が集うシリアの都市アレッポが政府軍とロシア軍に包囲され陥落するまでを2012~2016年まで5年間かけて実際にアレッポに住んでいたジャーナリストの女学生ワアドが自身の脱出まで含め記録したドキュメンタリー映画「娘は戦場で生まれた」(本物の戦場が写されている訳で映像としては究極と言わざるを得ない。これを面白いというのは不謹慎だが面白い。面白いと思ってしまうのは安全圏で映像を見ている第三者だからだが安全圏にいると思いきや突如刺される。じゃあ自分に何ができるのか、何かするのか。ただ無力である事を思い知らされる。)

と、毎週のように今年のベスト候補だ!というクオリティの作品が連続公開した。

2月からコロナの影響は徐々に広がっていたが、日本でも動きが出始めたのが2月後半。3月からは公開延期作も出始め、4月頭を最後に映画館も休館に入る。

休館前にコロナの影響をもろに受けたのが「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」マーゴット・ロビーの当たり役であるDCコミックの人気キャラクター、ハーレイ・クインを主役にしたアメコミ実写作品。外出自粛や3密が言われ始め、映画館からも客足が遠のき始めていたこともあり、興行的にはヒットとは言えないが、ヴァイオレンスの比重を強めた女性キャラクターたちのアクションには時代を感じる良い作品だった。
個人的には日本の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のパート6ストーンオーシャンを連想したりもした。ストーンオーシャンも女性たちが主人公で、ハーレイのビジュアルが主人公のジョリーンに少し似ていたことも連想した要因なのだが、それ以上に作者の荒木飛呂彦先生が女性を主人公として描いても容赦なく殴るし、殴られるみたいな事を言っていたのを思い出し(あくまで私の記憶。インタビューが載っていた文献を探したが見つけられなかった。間違っていたらごめんなさい。)連想した。ストーンオーシャンの連載開始は2000年なので、そう考えると荒木先生は20年先を行っていた訳であり凄いと思った。
話が逸れたが、ハーレイのアクションシーンはマーゴット・ロビー本人がほぼ吹替なしで行っているとの事なのでそこも見所だ(マーゴットは実在のアイススケーター、トーニャ・ハーディングを演じた「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」でもスケートシーンはほぼ吹替無しだったとか)。

その後、緊急事態宣言も出てしばらく休館が続き、解除後に映画館が復活して久々に劇場を訪れたのが6/6。4/3が映画館で観た最後の日なので約2か月休館が続いたわけだ。

そんな久々の6/6に観たのが「新喜劇王」。やる気だけは誰にも負けない俳優志望の主人公が、兎に角きつい目にあってボロボロになっても頑張るコメディ映画。
作品のクオリティそのものよりも個人的な思い入れが強い作品なのだが、忘れられないのは、終映後の場内で観客のおじさんが劇場を後にする際にふと立ち止まり、笑顔で場内を見回してから出て行ったこと。その姿に「俺も分かるぜ!おっさん!!」と思ったものだ。私の想いを投影しただけかもしれないが、久々に劇場で鑑賞できたことが嬉しかったように見えた。

6月は他にも、ランボーが「ホーム・アローン」する「ランボー ラスト・ブラッド」(ホーム・アローンのリメイクが待ちきれない人はこれを観よう!)なんかもあり、一様日本では映画館が再開した状態で上期が終わった。

「映画業界に大きな影響を及ぼした2作品」

ただ、再開したと言っても厳しい状況に変わりはなく、7~9月にかけては延期作の軽い公開ラッシュらしきもの(ラッシュというほどではないのだが待機していた作品がようやくという感じで公開した)があったが、確実に入ることが見込める大作は軒並み延期になり、10月からの予定はかなり閑散としている。

下期の話ではないが、大作でありながら延期せず劇場公開に踏み切った「TENET」と、対して劇場公開を中止してサブスク配信に切り替えた実写版「ムーラン」は外す事が出来ない話題だと思うので、それをもって締めようと思う。

まず「TENET」は、近年では珍しく監督名で客を呼び込めるクリストファー・ノーラン監督の新作。謎の人物からの依頼で世界を救うために「時間を逆行させる」装置を使って未来から襲ってくる敵と戦う主人公の話。前述した通り近年稀な監督推しの宣伝をしている作品(現在も第一線だが一昔前で監督名押しというとスピルバーグ監督やイーストウッド監督あたりになる)で、ヒットは堅いだろうと思われていた作品。本当なら延期してもおかしくなかったが「興行側のためにも」という監督の想いもあってか公開に踏み切った。

次に「ムーラン」だが、こちらは中国の伝説「花木蘭」をベースにした1998年公開のアニメショーン映画の実写化。ディズニーが今や映画市場で最大となりつつある中国を強く意識しメインキャストも中国国内で人気な俳優陣で固めたが、主演俳優が民主化運動を弾圧する香港警察を支持したり、エンドロールにウイグル人への人権侵害で世界から非難を浴びる新疆ウイグル自治区への謝意が入っていたことで、公開前、直後から鑑賞ボイコット運動にまで発展する多くの非難を浴びている作品。こちらは劇場公開を中止し、ディズニーのサブスクリプションサービス「ディズニー+」での配信に踏み切った。

両作ともに製作費は200億円強なのだが、興収は果たしてどうなったのか。現状での話だが、単純に数字で見れば「ムーラン」に軍配が上がっているらしい。前述の通り「ムーラン」は公開前から曰く付きの作品の為、調べて正直驚いた。興収だけ見れば現状「TENET」が300億円超え、「ムーラン」が270億円超えなのだが、「TENET」は劇場公開しているため、収益の一部は興行側に入るのに対し、「ムーラン」は映画館をかまさないことにより収益の全てがディズニーに入るので、結果として製作サイドに残るお金は「ムーラン」の方が多くなるそうだ(因みにTENETが黒字になるためには450億円以上の興収に達しないとならないらしい)。
他にもアメリカでは主要都市の映画館は未だに閉まっており、開いていても映画館という密室空間によるコロナ感染への恐怖心から足を運ばない人が多いことが「TENET」の収益が伸びないことに繋がっている。

この状況が今後の予定に影響したのか、マーベル作品「ブラック・ウィドウ」、007シリーズの新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が来年に、10月公開のDCコミックス原作のワーナー作品「ワンダーウーマン1984」が12月公開にと大作が軒並み延期になり、12月公開予定だったディズニー・ピクサーの新作「ソウルフル・ワールド」が劇場公開中止になり、「ムーラン」同様ディズニー+での配信に切り替わった。
上記のように、10月以降が閑散としていると書いたのはこの通りの状況だからなのだ。単に公開作がないだけでなく、今後は映画館での公開自体をしない作品が多くなる可能性も「ムーラン」の結果から高くなっており、映画館で観るのが好きな身からするとかなり不安である。

上記の「TENET」と「ムーラン」の状況はあくまで数字の面での話であり、1作品の評価という意味であれば間違いなく「TENET」に軍配が上がっていると言えるだろう。現に「TENET」は本国アメリカ以外では軒並みヒットしており、日本では緊急事態宣言解除後最もヒットしている。

対して「ムーラン」は、前述の通り様々な問題が浮上しアメリカで不評な事に加え、ターゲットの中国での作品評価も低い。更には映画ファンの中でも劇場公開に踏み切った「TENET」と中止した「ムーラン」への印象は大きく分かれている(ディズニーを擁護するとしたらメインの収入源であるパークの収益がコロナの影響で上がらず余裕がないことがある。自社が生き残るための経営判断であれば致し方なしと言えなくもない)。

ただ「TENET」と「ムーラン」は単に1作品の評価以上に、今後の映画公開形態に大きな影響を及ぼしたことは間違いなく、歴史的な分岐点になるかもしれない。今年も残り3か月弱。終息後どうなるか予測はつかないが、今は公開される数少ない作品を楽しみながら、一個人として映画業界を応援するしかない。


以上、映画好き「F」による、2020年上半期の映画振り返りでした!
過去のコラムはこちら。
*野毛印刷一番の映画ファンが2019年の映画を振り返る!
*「私」の2018年映画ベスト5【第3位~1位】
*「私」の2018年映画ベスト5【第5位~4位】

もちろん、「映画×印刷」の話もあります!
*【野毛社員一番の映画好きが語る!】映画のチラシの話
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*『PATU MOOK』で、グラフィックデザイナー大島依提亜さんとのお仕事について語りました!

TAG:映画 

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