【野毛社員一番の映画好きが語る!】映画のチラシの話

コラム

私にコラムの執筆依頼が来るときは「映画」と「印刷関係」の話という依頼が多い。

印刷会社なのだから印刷の話を書けというのは当たり前の話で、映画の方は私が毎回映画と言われなくても映画の話に無理矢理つなげるため、この人は映画じゃないと駄目なのだろうと依頼側の諦めか、配慮を感じるようになってきた。そんな配慮はありがたいのだがこれを書いている2020年5月4日現在、4月3日を最後に1か月くらい映画館には行かれてない訳で、何を書こうかなと湯船につかりながらつらつら考えていたら映画と印刷といえばプログラムとチラシという物凄く直接的なネタがあるじゃないかという、直接的過ぎるがゆえに安直と思われる事を無意識的に恥ずかしいと思って避けてきたのであろうネタに思い至った。

思い至ったものの「コレクターでもないし、プログラムは記事に取り上げてる人も多くて手を出しづらいよなあ」と乗り気になれないまま、気に入って取っておいた過去のチラシを確認したらいつの間にやら300枚近く溜まっていて、本格的に集めている人からしたらコレクションとは到底言えない枚数だろうが、集めていない人からすればまあコレクションと見えなくもないだろうと自分に言い聞かせてチラシの話を書こうと思う。

映画のチラシはどこでこだわる!?

私が詳しくないだけかもしれないが、映画チラシを大きく取り扱ったものとなると紙面のデザインの話がほとんどだと思う。なにしろ製本はほぼ断裁だけで、紙の違いなどは専門領域過ぎて一部の人しか分からないからだろう。

製本に関して「ほぼ断裁」と書いたが、この「ほぼ」がミソで殆どペラだからこそたまに違う製本の物があると「おっ!」と思ったりする。遭遇率の高い物だと二つ折りは割とあり、金がかかると巻き三つ折りもあったりするのだが、最近、007の新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(4月公開予定からコロナの影響で11月20日公開に変わりました)のチラシに出会った時は両観音折で豪華だなあと思わず唸った。何しろ単純計算で紙の量がペラの場合の4倍必要な訳で全国公開の007シリーズともなれば相当な量、刷っているのだろうから大したもんだ。このチラシに出会ったのは2月の半ばなのだがその後、早々に公開延期が決まったから、再作成にかかる宣伝費はきつかろう。何しろペラで作れば同じ規模の作品4本分を作成できたわけでこれをもう一度刷るとなると更に倍の8本分になる。8本分のプレッシャーがかかる事になるボンド氏もきっとコロナを恨むだろう。そういえば公開延期が多数でている関係でチラシが複数種類存在する珍しい状況にもなっている。

特に対応が早かったのはディズニーで公開延期が決まった次の週には公開日が日付から「近日公開」に差し変わったチラシがすでに劇場に置いてあった。という事は「元の公開日」、「近日公開」、そしてこれからまた作られる「新公開日」の3パターンできる可能性が高い訳でこんな事は早々ないだろう。その内の1本は「2分の1の魔法」というタイトルなのだが、タイトルは2分の1なのにチラシは3倍で皮肉なものである。

因みに私のコレクションの中で一押しなのは2007年公開の「グラインドハウス」。グラインドハウスと呼ばれるアメリカでB級映画を2~3本立てで上映している映画館があったらしいのだが、それをイメージした作品で本編は2本の長編と長編の間にグラインドハウスでかかっていそうな5作品の架空の映画予告が挟まって計3時間13分という少し変わった作品。この作品のチラシはグラインドハウス内の2作品を盛り込んだ内容になっているのだが、製本は十字四つ折りで片面の2面ずつに2作品の情報、裏面は4面使って1枚のポスターになっていて要は開くとB3サイズのポスターになるという代物。今まで見てきた映画チラシの中でも紙面デザインと製本が合致した格好のよいチラシだと思う。

映画のチラシの用紙について

紙に関して言うと殆どが汎用のコートかマットコート紙で印象としては宣伝費に余裕があるものの方が紙の厚みが厚いというくらいだろうか。ただこれも「殆ど」というのがミソでたまに上質や微塗工紙がぶち込まれる時があり、そういう時はデザイナーが絡んでいるのかなと思う。

最近の流行りなのか分からないが、アニメ作品のチラシにキャストコート紙(コート紙のようにコーティングされている事に変わりはないのですが、コーティングの塗料が乾く前に平滑なドラムを加熱して押し当てて表面をツルツルにしている紙です。コート紙がテカテカ位の光沢だとしたら、キャストコートはピカピカって感じです)を使うものがチラホラあって、2018年の「ドラゴンボール超 ブロリー」、2019年「コードギアス 復活のルルーシュ」「アナと雪の女王2」のいずれもティザーチラシ(映画のチラシは大体ティザーと本チラシの二段構えにすることが多くて、まずはティザー、公開が近づいてくると作品の情報をより詳細に盛り込んだ本チラシが出されます)に片面キャストコートが使われていました。デザインも似ていて、紙面の1ポイントにタイトルとキャラクターが印刷されていて背景はキャストコートを活かすために白のままっていうのが3作品ともに共通していました。

 


そんなこんな適当に書いていたら、そこそこの文量書けてしまったのでそろそろ締めようと思う。最後に1つ。そもそも映画宣伝にチラシを使っている国は少数だと思う。韓国、タイ、オーストラリアの映画チラシを紹介しているサイトがあったので0ではないのだけれど、私が訪れた香港、台湾、フィンランド、ニュージーランド(相当偏っているので指標として信頼性にかける。ロサンゼルスに行ったときにチャイニーズシアターにもチラシは無かったと思うのだけれどかなり前で記憶があやふやなので断言する自信がない)にはなかった。ペーパーレスが叫ばれている中、いつまで映画チラシ文化が存続するか分からないが享受できる内は楽しみたいと思う。(よくよく考えると日本の映画料金が世界一高いのって、ここらへんの海外にはない宣伝費関係しているのかしら)。

何にせよ、コロナが去って、映画館が復活するのを過去の作品を観たり、プログラム、チラシを眺めたりしながら願うばかりである。

TAG:チラシ 映画 

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