こんにちは。ヒラメキ工房編集長のソネです!
本日は皆さまお待ちかね?の、「第1回映像美ディスカッション」の後編をお届けいたします!
先日公開した前編では、各メンバーの仕事内容によって映画を観る視点が異なっていることがわかり、それぞれ面白い考察を聞くことができました。
今回は、作品により焦点を当てて、それぞれのメンバーの考察を深掘りしていこうと思います!
▼前編まだ読んでないよ、という方はこちらからご覧ください。
【目次】
1.撮影における、自然光と照明の使い方(レヴェナント考察)
2.カラーグレーディングの技術(ムーンライト考察)
3.カメラワークや構図のこだわり(セッション、her考察)
4.社会派作品とエンターテインメント性(エターナルズ、ノマドランド考察)
撮影における、自然光と照明の使い方(レヴェナント考察)
ちゃんくぎ:では、ここからは作品ごとにそれぞれの考察を深掘りしていこうと思います!
まず「レヴェナント」についてですが、ヨネダさんは「自然描写の映像がすごい」と仰ってました。
どのあたりがグッときたのか、詳しく聞かせていただいてもいいですか?
ヨネダ:そうですね…。光を飛ばしてでもなく、且つ潰してでもなく…というか。すごい雰囲気があって、トーンが不思議なくらいきれいです。
光の使い方がうまいなって思いました。自然光でやってるのか照明使ってるのかわかんないですけど…。
ちゃんくぎ:先ほどフカさんから、この作品は、毎回時間帯を決めて撮影したという話がありました。
ヨネダさんは撮影するときに「この時間帯の光がいい」とか、「この時間だとこういう表現ができる」とか、そういうのってありますか?
ヨネダ:さっきフカくんが言ったように、マジックアワーは意識しています。
日没直後とか、日の出前が一番きれいに見えるって言われてるんですが、多分、外で一番空気がきれいに見える時間だと思います。
空気感というか、それが一番美しく見える時間帯だと思ってて…。
フカ:なるほど。では時間帯以外で、照明を使わずにきれいに見せる・統一感を持たせる方法ってなんかあったりするんですか?
ヨネダ:(どの映画でも)照明は使ってると思うんだよな。使ってないように見せるのが一番上手いんですよね。
ワタリー:CGとかもそうですよね。「これ実写じゃなくて本当はCGなんだよ」って言われて、「えー!そうなの!」って驚くぐらい、実写に近いようなものを作る。
意外と、普通に見過ごしているものの中に、ものすごいCGの技術や照明の技術が使われている。ってことがどの映画にもあると思う。
ちゃんくぎ:「演出」と言うと「作り込む」みたいな、ちょっと非現実的に見せるところが演出と思われがちですけど、そうではないっていうところがポイントですね。
「自然」で言うと、ホリタさんも写真のモチーフに富士山やお花とか、自然なものが多いと思うんですが、撮り方で気をつけていることはありますか?
ホリタ:だいたいパターンはありますね。飛行機を撮るんだったら、「流し撮り」っていう、シャッター速度を長めにして飛行機を追いかけながら撮る方法とか。そうすると背景が流れて、飛行機にだけピントが合う。
バイク、車などを撮る時はそういう風に撮ったりします。
あとは、山とか自然を撮る時って、空が青いのはだいたい午前中なんですね。
自然や風景を撮る時は朝早く。とか、ちょっとドラマチックな感じで撮りたい時は夕方や早朝。とか。
さっき言ってたマジックアワーですが、確かにその時間帯はきれいな写真が撮りやすいですね。
星を撮る時は、月が出てると月明かりで星が消えてしまうので、新月かどうかはあらかじめチェックして、撮りに行ったりしますね。
▲実際にホリタが撮影した写真。
この写真を撮ったキャンプの様子はこちらから▼
フカ:質問です。カメラを通して撮った方が、肉眼よりもきれいに見える。そういうことってあったりするんですか?
今の話を聞いて思い出したのですが、昔フィンランドでオーロラを見に行ったとき、肉眼でオーロラは見えなかったんですけど、写真にはオーロラが写ってた、ということがあったんです。
そう考えたときに、「カメラだから拾える光」みたいなのがあるんだとしたら、カメラを通したほうが肉眼で見るよりも綺麗に見えるんでしょうか?
ホリタ:そうですね、カメラは光を撮っているので。人間の肉眼で見るよりも、カメラが光を集めて写したほうが人間の目で見えないものが写ったりするんです。
天の川の写真とかもそうです。肉眼だとほぼ見えないですが、30秒くらい長時間露光で撮って、そうするときれいに写る!ということがあります。
ヨネダ:使うカメラや設定でも写るものって変わってきますよね。
★写真のテクニックについては、ヒラメキ工房でも多数公開しています。
カラーグレーディングの技術(ムーンライト考察)
ちゃんくぎ:なるほど。自然をどういう風に活かしながら撮っていくか。というのがキーになってるように思いました。
では、続いて「ムーンライト」。ムーンライトは前回のフカさんの解説では、色を結構イジっていて、しかも3つのフィルムで撮りわけているように見せてる、とのことでした。
最近の映像作品は、やはりカラーグレーディングの部分、撮った後にどう色をイメージに合わせて変えていくのか、というのがキーになってる印象があります。
その辺りをカラーグレーディングを得意分野としているKAJIさんに、最近のカラーグレーディング事情について話してもらおうと思います。
▼こちらの動画をご覧ください!
最近のカラーグレーディングの傾向から、海外と日本のライティングの違いまで話が広がりました。おもしろいですね!
ライティングの違いについては、生活や文化の話にまで発展しました。
ヨネダ:海外だと、家の中で白色蛍光灯を使うことがあまりないって聞きます。海外ってこう…電灯みたいな、影が出る照明を使ってる。日本みたいな家の中を均一に照らす文化ってのがあまりない気がします。
フカ:確かに言われてみたらそうですね。西洋とかになってくると、やっぱり暖色系の電気とか、家の中の明かりなんかはそういうイメージがありますもんね。
ワタリー:どうしてなんでしょうか。蛍光灯の方が使う電気が少ないし、部屋は明るくなるのになぜ電球を?好んで使っているのかはわからないですけど、面白いですね。
フカ:蛍光灯で白く照らすときって、無機質なイメージを作りたいときが多い気がします。どの作品かって言われたらパッとは出てこないですけど…。
イメージとしてこう…登場人物が自分がどこにいるのかわからない、そして何か不穏な空気が…みたいな…。“蛍光灯の部屋”みたいなのは確かにあるかもしれないなって今聞いてて思いましたね。
ワタリー:ただ、合成するときとかクロマキーなんかだと色を均一に当てなきゃいけないから、そういう時はたぶん蛍光灯とか、広い光源を使っているかもしれないですね。
さらにこのディスカッションが終わった後、日本と海外で照明の使い方が異なるのは、「顔のホリの深さの違いではないか」という考察もでてきました!
外国人はホリが深いため、影が出るような照明を好む。
一方で、日本人は顔全体をフラットに照らすような照明を好むのではないか。と…。
な、なるほど!確かに骨格のちがいとか、そういったところも影響してそうですね。
そしてまた、それが映像制作の国ごとの特徴として表れてくるのが面白いですね!
カメラワークや構図のこだわり(セッション、her考察)
ちゃんくぎ:照明で言うと、「セッション」も狭い空間で起こる内容が多いこともあって、暗いところは結構こっくり黒い。それでいて、一部に光が当たってるような表現が結構あるなと思いました。
その光の表現というのが、やはり最初の「レヴェナント」にもかかってきますが、結構重要な要素なんですね。
では、その「セッション」の話と、「her/世界でひとつの彼女」の話をしていきたいと思います。作品についてもうちょっと詳しくフカさんからお話をお願いしようと思います!
ここでは、カメラワークや構図、画作り、といった、さらにクリエイティブな話を聞くことができました!
▼こちらの動画をご覧ください。
当社では最近、ライブ配信のお仕事も多くいただいているのですが、プロならではのこだわりがあるということが、この動画からも分かりますね。
それでは残りの2作品について深掘りしていこうと思います。
社会派作品とエンターテインメント性(エターナルズ、ノマドランド考察)
ちゃんくぎ:クロエ・ジャオ監督の「エターナルズ」と、「ノマドランド」。
こちらは、「ノマドランド」が受賞した直後ぐらいに、確か「エターナルズ」の制作が発表されたと思うんですが、公開もこれからですよね?
フカ:実は「エターナルズ」の方が公開は先になるはずだったんです。その後に「ノマドランド」が来る予定だったんですが、コロナの影響があって…。
「エターナルズ」はシリーズものの1作にあたるんで、シリーズ全体が後ろ倒しになったんですね。
結果として「ノマドランド」がアカデミー賞を取ったことで、「エターナルズ」はアカデミー賞作品賞を取った監督の、しかも超人気シリーズの一作、みたいな形なんで。むしろ延期して箔が付いたんじゃないか、という状況です。
ちゃんくぎ:そういう裏話もおもしろいですね!
私はあまりMarvelシリーズに詳しくないんですが、フカさんから見て、これまでのマーベルのシリーズと今回のクロエジャオ監督のエターナルズの映像的な違いって何か感じるところはありますか?
フカ:正直予告編だけしか見れていなんで、今の情報だけからここがどう違う、ってところまでは正直私の目ではわからないです。
ただ、今のマーベル作品、マーベルシネマティックユニバース、マーベルスタジオっていう会社が作っている作品は、結構今までそんなに名前が知られてこなかった新人監督を積極的に起用しているんですね。
且つ、エンターテインメント作品で成果を出している監督というよりかは、社会モノを撮ってる監督なんかを積極的に起用していく傾向があります。
「ブラック・ウィドウ」という作品がこのあいだまで上映されてましたけど、それもケイト・ショートランド監督っていう、社会における女性の立場だったり、そういう作品を撮ってきているような監督が撮ってたりとか、ちょっとそういう特色があったりします。
なので特に最近のマーベル作品はエンターテインメント性を持たせつつ、監督が他作で描いてきた社会的な問題とかっていうのを必ず反映するようにしてる、というところが、これだけヒットして続いてる理由のひとつなんだろうなと思います。
ちゃんくぎ:ありがとうございます。世界中から人気がある理由が、なんとなくわかった気がします。
各作品の深掘りは以上になりますが、他に聞きたいことがある方はいらっしゃいますか?
ソネ:はい、撮影時の照明について質問です。
撮影する時って、照明をこう配置しようとか考えると思うんですが、加工でどう編集しようとか、どこまで計画って撮る段階で考えているんですか?
ヨネダ:写真は完成を予想して、照明を作って撮りますね。基本そうあるべきだろうと思います。
ワタリー:動画もアングルとか、照明とかも含めて、「後で編集でこうつなげるから今こう撮る」っていうのは最初に決めなくてはいけないことで。
多分そこが素人とプロの違いなんだと思います。運動会で撮るお父さんとプロの違いは、多分編集のことを考えてるかどうかだと思います。
ヨネダ:トーンとか、撮った時点でほぼほぼ決まっちゃうので、後から編集でそれを変えることはできないので。全体の調子は特に決めないとまずいかな。
ソネ:撮った後に編集で色味をガラッと変えたり揃えたりする、ってのはあまりよろしくないんですか?
ヨネダ:撮って変えるのはそんなにないかな。それは失敗作を流すのと同じになっちゃうので。質も悪くなってしまうし。
それはなるべくやめたい、避けたいという思いはありますね。
フカ:その「予測」というのはどれくらいたつものなんですか?
今話を聞いてる中で思ったのが、クリント・イーストウッドなんかは、照明をほとんど使わないで撮るらしいんです。
で、照明使わないで撮るから、ものすごく早撮りだと言う話を聞いたことがあります。
制作期間って期間が長くなればなるほど、当然拘束時間が発生するだろうし、人件費も上がってくるじゃないですか。
ってことは、安く済ませたい・短く撮りたいってなった結果、やっぱりチャンスが減るからその作品としてのクオリティが下がっちゃった。っていうことになるんだとしたら、青写真がちゃんと描けていれば、たとえ時間が短かろうが、その狙った通りにやっていけば狙ったものがあがるはず。
って考えれば、必ずしもそこ(撮影時間とクオリティ)は比例してないのかななんて考えたり…。
その実際の予測ってのはどれくらい立つものなんでしょうか?
やっぱりある程度時間がないと予測というのも限界があるから、撮ってやっぱり違ったから、こう直さないといけないよなっていう修正をしないといけないのかなとか。
ヨネダ:スタジオで写真撮る時は100%作っちゃいます。屋外で撮る時はかなり天気なんかに左右されるんで、それに照明を設置するとやっぱり時間がかかるんで…。
自然に見せるために作っていかなきゃらない、というのが、やっぱり時間がかかります。
フカ:照明を使う時は、だいたい照明をどう使えばどう撮れるか、という予測はあってるってことなんですね。
外で撮るとなったら天候とかに左右されますから、結果そういう可能性を考えると、時間があるに越したことはないってことですね。ありがとうございます。
ちゃんくぎ:それでは、そろそろ締めに入ろうと思います。
今回、皆さんにクリエイターの観点で映画について語っていただきましたが、さまざまな視点での話が出てきて非常に面白かったです!
まだまだステイホーム期間は続きますが、この記事や動画を見た方が、「映画観てみたいなー」と思うきっかけになってくれたら嬉しいな、と思います!
また、この記事を最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございました!
一同:ありがとうございました!
▼前編をもう一回読む。
▼映画マニアのフカが語る「映画と型抜き加工の話」