先日、出版物に総額表示を義務付ける法案がSNSを中心に話題に上がりました。その一連の報道の中で出てきた「スリップ」という言葉。馴染みのない方も多かったのではないでしょうか?
本記事では、その「スリップ」について、少し掘り下げてみようと思います。
※この記事は2018年2月に公開されたものを再編集したものです。
スリップとは
ネットで本を購入する機会のある方は、お気付きかもしれませんが、届いた本に挟まった2つ折りの「補充注文カード」。
書店で購入するときはレジで店員が引き抜いていたあれです。このカードは通称「スリップ(Slip)」と呼ばれていますが、滑ることを意味する「スリップ」ではなく、「伝票=スリップ」の意味のようです。
スリップの補充注文以外の役割
本来なら書店で本を補充する際に必要な伝票ですが、現在はISBN(国際標準図書番号)によって在庫がコンピュータ管理されている書店が増えたため、今やスリップレス化も進んでおり、本に挟まったままで販売されても、特に問題はないようです。
それならば、このカードはもう必要ないのではと誰もが思うはずですが、まだまだ小さな書店では、コンピュータ管理ができていないところもありますし、実は補充注文をする以外にも役割を持っています。
表面は「注文カード」ですが、折り返した裏面部分は「売上カード」になっていて、これを切り離して、まとめて出版社に送ると、書店は「報奨金」がもらえるというケースがあります。
金額はまちまちですが、1枚あたり、5円、10円、あるいはさらに上乗せ、といった割合で書店に支払われるそうです。
スリップの工夫の施されたかたち
「スリップ」は、ほとんどが白または色上質紙にスミ一色で印刷されており、サイズは幅4.5㎝、2つ折りにした状態で13㎝が平均的。折り方は2つ折りでも均等ではなく、片方の売上げカード面が短くなっています。
「スリップ」を2つ折りにして本の中のページに挟みこめば、書店でページをめくっても落下が防止できるようになっています。
そして、大きな特徴は2つ折りにする箇所に入った半円形の切り込み。レジで素早く抜き取るためにその部分が飛び出した形状になっています。この丸い部分の印象から、業界では「ボウズ」とも呼ばれています。
当社のように出版社ではない印刷会社でも、自費出版を扱っていますので、本を一部の書店にて委託販売する際には、この「スリップ」の装着を求められることがあります。
単純な片面1色印刷のわりには型抜き加工が必要な「スリップ」。専門に受注している印刷会社もあるようですが、当社にももちろん「スリップ」の型がありますので、お受けすることが可能です。
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