「鬼滅の刃」炭治郎柄で注目される日本の伝統文様

コラム

コロナ禍において歴史的なヒットを記録し、大きな社会現象となったアニメ映画『鬼滅の刃』

主人公の竈門炭治郎かまどたんじろうが着ている、羽織柄の緑と黒の市松模様をあしらった商品がさまざまに登場するなかで、悪質な模倣グッズが多数出回るといったトラブルも発生。原作の出版社は、主要キャラクター6人が着る、羽織の柄の商標登録を出願しました。

伝統的な文様が商標登録できるのかと疑問を持ったまま、そもそも「文様」とはどんなものなのか、歴史を遡ってみました。

日本の伝統文様の歴史

その始まりは縄文時代。土器や漆器などへの装飾的、祭祀的な用途で、点や直線、曲線で描かれたたくさんの文様が生み出されています。

例えば市松模様は、埴輪や装飾品などに見られ「石畳文」と呼ばれていました。市松模様の名称がつけられたのは江戸時代。歌舞伎役者の佐野川市松が舞台衣装にこの文様を好んで着用したことから呼ばれるようになりました。

最初は偶発的に発生した文様も、植物や動物、自然現象をモチーフにしたものなどが登場。
奈良~平安時代には、日本独自のものや海外から伝わったものをアレンジした文様が広まり、目で楽しむことを目的とした文様が生まれました。

やがて工芸品や衣服などの制作技術が高まり、デザインとして認識され始めると、身近なものとして用いられるようになりました。
この頃、朝廷に仕える貴族たちを中心に、独自の文様を装飾としてあしらった衣服や家具などを使うようになり、家紋が普及していきました。

日本の伝統文様とデザイン

多くの文様は単純な要素と対称性から構成されていますが、四方に規則正しく連続させたものは「和柄」「割付文様」などと呼ばれています。

和柄にはその成り立ちやモチーフなどから特別な意味を持つものも多く、厄除けや開運の象徴として、着物や生活用品として身近に置くようになりました。
市松文様には「永遠」「子孫繁栄」、炭次郎の妹、禰豆子ねずこの着物柄、麻の葉文様は「子の成長」「魔除け」につながるとされています。

他にも「青海波せいがいは」や「うろこ」「矢絣やがすり」「七宝しっぽう」「亀甲」「紗綾型さやがた」「唐草」など、私たちの生活に溶け込んだ文様はたくさんありますが、印刷に関わるグラフィックデザインにおいても文様は大切なデザイン素材。
東京オリンピック・パラリンピックエンブレムに市松文様がモチーフになっていますが、和を意識したデザインや、ロゴ・マークへの活用などさまざまな現場で使用されています。

とはいっても、ひと昔前は当然すべて手描きという時代もありました。デジタル以前は、漫画などで現在も使われている、模様柄が印刷された粘着フィルム、「スクリーントーン」が版下作業で重宝されていました。

時代が変わっても伝統の文様は、日本特有の美意識に支えられ、ずっと継承されていくもの。『鬼滅の刃』ブームの今、改めて感じさせられました。

 


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