結びつくはずのない「印刷と大理石(マーブル)」の謎にせまる

コラム

マーブルとは

今となっては懐かしいガラス製の「ビー玉」は、江戸時代にポルトガルから伝わり、ガラスを意味する「ビードロ」の玉ということで「ビー玉」と呼ばれるようになりました。その「ビー玉」が日本の一部の地域では「マーブル」と呼ばれています。英語で「マーブル(marble)」は大理石。色ムラのあるガラス玉の模様が「マーブル模様」に似ていることから、ビー玉の機械製造が始まったアメリカで「マーブル」と呼ばれるようになり、それが日本に伝わったものと考えられます。

さて、その「マーブル」が印刷の製本工程にも存在します。若い方はあまり馴染みがないかもしれませんが、「マーブル巻」という製本方法があります。主に伝票類や便箋、メモ帳などに天ノリで背に巻いて綴じる際に、定番の緑色と紺色の柄の背貼りテープがよく使われました。この柄の紙は帳簿や出席簿などの見返しにも使われていましたので、どこかで目にしたことがあるはずです。最近はほとんど見なくなったと思っていたら、独特のレトロ感を好む人もいて、この紙を使ったぽち袋やレターセットなど新たな商品も誕生しています。

この柄のテープや紙がいつから使われたか定かではありませんが、明治時代に書籍や帳簿などの改ざんを防止する目的で、小口面を墨流しなどの方法で大理石のような模様を装飾したことが始まりのようです。帳簿から一枚抜き取ると模様がつながって見えないので、抜き取ってもすぐにわかってしまうということで使われ、そのなごりがマーブル模様の帯になっていて、マーブル柄でない帯も「マーブル」 と呼ばれるようになったようです。

印刷とマーブル

さらにルーツを辿ると、明確な起源は不明ですが西洋の古い重厚な書物にはきれいなマーブル模様が使われています。 場所は見返し部分。 書籍の中身と表紙をつなぎ補強するため、丈夫な紙を内側に付けて製本上重要な役目を果たす見返しに独特の模様のアートが施されていました。日本や中国の墨流しという技法が伝わったという説もありますが、ヨーロッパでは17世紀頃にこの製法が確立したといわれています。このマーブル模様はマーブリング技術を習得した専門職人によって作られ、 どんなに熟練した職人でも同じ文様は作れない、すべて1点 1点の手作業で作られたものでした。マーブル模様の紙はイタリア、フィレンツェの伝統工芸の土産物として今も人気です。この模様は見返 しだけでなく小口にも施されるようになり、それが明治期に日本に伝わったといわれています。ずっと不思議だっ た「マーブル」の謎が少し解けたような気がします。

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