
【印刷物の退色】色があせる現象とその仕組み
朝の連続テレビ小説「おちょやん」のモデルといえば、昭和の上方女優の代表と言われた浪花千栄子さんのようです。
番宣などでその写真を見たとき、昭和生まれにとっては街角で色あせたオロナイン軟膏の金属看板のあの人ね!と思ったものです。
当時は、「広告なのに色あせて影しか残ってない」と思ったものですが、屋外に出されているとどうしてもそうなってしまうことが、印刷物に携わるようになって理解できました。
カラー印刷は、シアン(C)マゼンタ(M)イエロー(Y)ブラック(K)の4色のインキを用いて、小さな網点で絵柄を表現しています。CMYKのそれぞれのインキは、色別に異なる顔料を原料として使用しており、これが退色が起こる要因となっています。
CとKに使う顔料は分子レベルで結合が強く、太陽光に含まれる紫外線によって破壊されにくいのですが、YとMの顔料は化合物の結合が弱いため、光の中でも特に強い力を持つ紫外線の下に長時間晒すと結合が破壊され、本来の色が出なくなってしまうという理屈のようです。(もう少し詳しく知りたい方は、各インキメーカーのHPに記載されていますので参照してください)
その結果、CMYKで表現されていたもののMYが発色しなくなったものが、「色あせた」「焼けた」「退色した」印刷物となるわけです。
【印刷物の退色】こんな用途・場所で使う時は要注意
ここまでご説明したように、直射日光の当たるところ(屋外や窓際)、屋内でも白熱電灯など紫外線が含まれるものの下で、退色は発生します。
印刷物を退色させないためには、紫外線を含まないタイプのLED照明などのもとで、管理する必要があります。
とはいえ、広告など屋外での使用が避けられない場合もあると思います。最後に、そういった場合での印刷物の退色を防ぐ方法をご紹介します。
【印刷物の退色】防ぐためには耐光インキ
このような退色を防ぐため、各インキメーカーは耐光インキを販売しています。
耐光インキは、MとYのみが標準のようです。前述したように、CとKは退色しにくいため作られていないんですね。
耐光インキの特徴としては、通常のインキとは違った顔料を使っているため、発色が多少鈍くなる、グロス感がなくなる、ということがあります。通常のインキで色校正などをしていて、途中で変更する場合などは注意が必要です。
また、いくら耐光インキを使ったとしても、強い紫外線の下では、やはり遅かれ早かれ退色は発生します。
通常のインキよりも退色を軽減できる、といった視点で使用するのがよろしいと思います。
実際に当社では、居酒屋さんの屋外用メニューボードをパウチ加工したうえ、1年間使用する、という条件のお仕事をしたことがあります。この時は、顔料系大判プリンタで出力する、という方法を用いました。
結果としては、真夏の直射日光を浴びても退色せず、初期の発色を維持することができました。単価は上がってしまいますが、200年持つ、とうたっているメーカーもありますので、退色させたくない印刷物(今回のようなメニューボードやポスターなど)をご検討の方は、この方法も検討してはいかがでしょうか。
ご興味がありましたら、ぜひこちらのお問合せフォームからご連絡ください。