【皆さま、映画の前売り券って買いますか?】映画と型抜き加工の話

コラム

「映画の前売り券」と「型抜き加工」

皆さま、映画の前売り券って買いますか?

年に70~80本ほど映画館で映画を観る私にとってはかなり重要なアイテムです。一般料金が大人1,900円、対して現在前売りは1,400~1,500円が殆どなので仮に1,500円で考えても80本で32,000円安くなる計算になります。勿論貧乏人である私はサービスデイ、ポイントカードを駆使していますがそれ以上に前売りは重要な存在になります。

なんでこんな話をするかというと最近チケットショップに行くと前売り券が出ていない事が多く印刷にもかかわる事だからです。

弊社の仕事でも紙製のカードは割と多く、コンビニなんかで見かける固有のコードが印字されていて購入者がそのコードから電子マネーを得るあのカード台紙を作っています。
ちっさいペラ物ですが実は意外と印刷後の製本、加工のパターンが多いのが特徴でもあって大まかに書くと


①断裁してから四隅の角を穿孔機を用いて丸くするもの。

②1枚の大きな紙に複数枚が印刷されたシートの状態で、1枚のシートに印刷された枚数と同じ枚数分の金属刃を付けた型でシート毎に抜いていくもの。

③ブッシュ型という筒状の金属型に、1枚ごとに小裁ち(カードの四方には余白を残した状態)して丁合した状態のカードを押し込んで抜き落とすもの。
(型はカード状の筒なので押し込むと四方の余白が落とされてカードだけが筒の反対側からところてんみたいに押し出されます)


なんかがあります。それぞれにメリット、デメリットがあります。

①断裁してから四隅の角を穿孔機を用いて丸くするもの

メリット:型作成費用が掛からない

デメリット:穿孔機で角を落とすため、角の弧の滑らかさは型には劣る。

 →小ロット向き(大ロットになると穿孔機に通す回数が多く時間がかかる為)

②型でシート毎に抜いていくもの

メリット:①の方法より早い。

デメリット:型作成費用が掛かる。

抜き切るのは手作業(型抜き機で抜いた直後は部分的に繋がった状態で機械から出てきて余分な部分を手でむしり取る)なのでシートに繋がっていた箇所の跡が残る。

 →大ロット向き

③筒状の金属型に丁合した状態のカードを押し込んで抜き落とすもの。

メリット:つなぎ跡も残らず仕上がりが綺麗。
複数枚絵柄があり、丁合順が決まっている物でも面付と小裁ちを工夫することで抜き前のタイミングで丁合状態にできる。

デメリット:型の費用が非常に高い。

 →定期的に動き続ける事が前提の大ロット案件向き

 

といった違いになります。

映画の前売りは2010年までは美術館、博物館などの入場券なんかに多い紙製の短冊状で端にミシン目が入っていて切り取れる、所謂「チケット」として多くの人が想像するタイプの物のみでした。ただオンライン予約が普及したことによりそれに対応できるタイプの前売り券(ムビチケという名称です)が2011年から販売され始めます。

使い方は上述の弊社で取り扱う電子マネーカードと同じく記載されたコードを予約時に入力する物で、この前売り券は形状がカードタイプになります。当初は紙でなくPET製だったのですがおそらくコスト面からか、私の手元にあるものから予測するに2016年の冬頃から紙製に移行しています。紙製のものの製本は上記の①に該当しているので1作の作成枚数はそれほど多くないのかなと思います。

 

話を頭に戻しますがこの前売りが最近少なくなってきていると思うのです(あくまで私の感覚で統計とか取っている訳ではないです)。ただそもそもオンライン予約が普及しているという事は全て電子で済ませることも出来るわけで、ムビチケも当然電子で購入することも可能ですし、電子のみの販売作品も存在しています。

となると逆に何故紙の券が存在するのかという疑問が出てきますが、それはオンライン環境がなく(もしくはやり方が分からず)当日窓口購入に使用する人もいるからです。という事はオンライン環境が完全普及すれば紙の前売りは存在理由がなくなってしまう訳でコレクションしている身からすると少し寂しく、寂しさからこの文章を書いたわけです。それだけです。

ただ本当カードくらいのサイズだと嵩張らなくて良いんですけどね。1年に1回くらい「あぁ、こんな作品観たな」とファイルをペラペラするのが好きなんですがね…。私のどうでも良い感傷だけになってきたのでそろそろ締めますが最近1つだけ良い事もありました。

同じくいずれは絶滅しそうな映画チラシですが、サブスク配信コンテンツの一部劇場公開、という絶対にチラシは無いと思っていた「Mank/マンク」という作品(Netflixで12月4日から配信の作品。監督は「ファイト・クラブ」「ソーシャル・ネットワーク」のデヴィッド・フィンチャー。オーソン・ウェルズの監督デビュー作「市民ケーン」の脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツの伝記です。もし観る場合は最低「市民ケーン」だけは予習しておく必要があります。)のチラシが何とあったんです!!しかも最近の映画チラシじゃ絶対にお目に掛からない片面4c印刷!!(4c掛け合わせの黒だと思うのですが、もし1cスミのみだとしたらごめんなさい。)単純に両面4cにする予算がなかったんでしょうが逆にレア感がありました。それだけです。以上です。


「印刷×映画」の話はほかにもあります!

『PATU MOOK』で、グラフィックデザイナー大島依提亜さんとのお仕事について語りました!

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