ウェブアクセシビリティとは?チェックツールや対応の仕方を紹介

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webにアクセスする女性の画像

2024年4月1日に施行された障害者差別解消法の改正により、これまで国や地方公共団体に義務付けられていた「合理的配慮の提供」が、事業者にも義務化されました。

これに伴って話題になったのは、自社ウェブサイトの「ウェブアクセシビリティ」の確保です。ウェブサイトのご担当者さまは対応に追われたのではないでしょうか。

当社も3月にコーポレートサイトのウェブアクセシビリティ対応を行いましたが、どのようにサイトを修正すべきなのか一般的な手順があまり公開されていないこともあり、「まだ対応できていない!」という企業も少なくないのではないかと思います。

そこで本稿では、当社の経験を踏まえ、「ウェブアクセシビリティとは何か」「どんなチェックツールでどう対応すればよいのか」といった疑問にお答えします。

ウェブアクセシビリティとは

ウェブアクセシビリティとは、「Web」+「accessibility」の単語が組み合わさった言葉です。
「accessibility」は、「access(近づく)」+「ability(ことができる)」=「近づける、アクセスできる」という意味から派生し、「利用可能である」「利用可能な度合」という意味を持っています。

ウェブアクセシビリティとは、ウェブ上のコンテンツとして利用可能な度合を表す言葉で、この場合は「“万人にとって”利用可能」という意味合いになります。
つまり、ウェブコンテンツは、視覚・聴覚・色覚・身体機能・知覚に障害をもつ方、高齢者、あるいは一時的に障害のある方でも利用可能であるべきだという考え方を表しています。

このウェブアクセシビリティは、先述の「合理的配慮の提供」に該当し、各企業に対応が求められるようになりました。

ただし、全てのウェブサイトが一定のウェブアクセシビリティの基準に達していなければならないわけではありません。現在の法律では、自社のウェブコンテンツの内容を把握し、それらが基準を満たしていない場合は改善策を示す必要があります。

▼総務省が示しているウェブアクセシビリティの基準
https://www.soumu.go.jp/main_content/000945249.pdf

▼総務省での取り組みの例(総務省ウェブアクセシビリティ方針)
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/policy/webaccessibility/index.html

ウェブアクセシビリティ未確保で起こりうるリスク

ガベルの写真

では、ウェブアクセシビリティを確保していない場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。海外ではすでにウェブアクセシビリティに関する事件や訴訟が発生しています。

【アメリカの例】
・あるデリバリーサービスのウェブサイトで、視覚障害者がクーポンを利用できない仕様だったため訴訟に発展。企業は賠償金を支払うことになった。
・ECサイトが、視覚・聴覚障害者には利用できない作りになっていたため、同様の障害を持つ団体によって集団訴訟が起こり、企業は和解金を支払うことになった。

【フランスの例】
・一定の売上を持つ企業がウェブアクセシビリティ基準を満たしていない場合、罰金を科す制度が導入された。

これらの事例から、海外ではウェブアクセシビリティについて一定以上の基準を満たさなければならなくなっています。日本ではまだ同様の訴訟は発生していないようですが、法改正に伴い、今後発生する可能性はゼロではありません。国の示した基準に合わせて対応していくことは必要だと言えるでしょう。

しかし、ここで大事なのは、ウェブアクセシビリティはリスク回避のために行うものではないということです。企業として、誰一人置いてかない社会の提供は重要な使命と言えます。
「お金がかかるから、時間がかかるから、うちの会社はやらない」ではなく、対応しなければいけないものと考えましょう。

ウェブアクセシビリティ対応の基準

さて、そのウェブアクセシビリティ対応の基準として、「Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0」があります。
▼日本語翻訳サイトはこちら
https://waic.jp/translations/WCAG20/quickref/

各項目ごとに「レベルAからAAA」が書かれており、今回各企業に義務付けられたのは、「レベルAに対応する努力をすること」です。
対応すべき内容に対して、それぞれ解決策を見つけ、ウェブサイトに反映させなければなりません。

ウェブアクセシビリティ対応方法とチェックツール

では、ここからは具体的な対応方法をご紹介します。

まずすべきことは、サイト内で「ウェブアクセシビリティ方針」を策定・公開することです。ウェブアクセシビリティ方針に記載する内容は以下の通りです。

・どのようなウェブアクセシビリティ方針を取っているかを示す
・対象となるウェブサイトの範囲を示す
・「JIS X 8341-3:2016」もしくは「WCAG2.0」で定義されている、A・AA・AAAのどのレベルに適合しているかを示す
・基準である「JIS X 8341-3:2016」もしくは「WCAG2.0」とサイトの対応表を作り、ウェブアクセシビリティ試験の結果を公開する

また、ウェブアクセシビリティ試験の方法とチェックツールは、以下のものが挙げられます。

1.「miChecker」を利用する
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/michecker.html

2.「Nu Html Checker」を利用する
https://validator.w3.org/nu/

3.目視による確認

ウェブアクセシビリティに対応したサイトに修正していくにあたっては、「『知覚可能』『操作可能』『理解可能』『堅牢』であるウェブコンテンツを作成すること」に気を付けなければなりません。
例えば、デザインやコード、コンテンツに関して、それぞれ以下の要件を満たす必要があります。

【コード】

・正しいHTMLの記述をする
・キーボードのみやマウスのみなど、特定のデバイスで問題なく操作できるようにする。(例えば、キーボードだけでは操作できない内容がある、などはダメ)
・操作が袋小路にならないようにする(キーボードのみマウスのみの操作で)
・テキストの拡大縮小を可能にする
・タグが本来持っている用途に即して使われるようにする
・スクリーンリーダーで読み上げたときに意味がわかるようにする
・どんなデバイスでも利用可能なウェブサイトにする

【デザイン】

・誰が見ても誤解しないようなデザインにする
・色覚異常の人も利用可能なデザインにする
・色のみでコンテンツの意味を表現しない
・聴覚、視覚のいずれかの機能だけでもコンテンツを利用できるようにする
・ナビゲーションに一貫性を持たせる
・フォントの一定の基準を満たす

【コンテンツ内容】

・動画や音声は自動再生しない(自動再生する場合は3秒以上に収まるように)
・光の点滅を繰り返すコンテンツをつくらない
・自動で切り替わるものは停止できるようにする
・時間制限がないようにする
・写真やイラストなどで情報を指し示している場合、代替テキストを用意する
・映像コンテンツに字幕をつける
・音声コンテンツには代替のテキストを用意する


これらを踏まえて、当社のコーポレートサイトで公開したウェブアクセシビリティ方針と試験結果がこちらです。
▼ウェブアクセシビリティ方針
https://www.noge.co.jp/accessibility/

▼JIS X 8341-3:2016に基づく試験結果
https://www.noge.co.jp/accessibility/20240328/

このようにサイト内で公開することで、ウェブアクセシビリティに対応していることを示すことができます。

まとめ

ウェブアクセシビリティ対応は、今後法規制が強化される可能性があるだけでなく、より多くのユーザーにアクセス可能なウェブサイトを提供することで、企業にとってもプラスに働きます。
また、明確な基準を満たしていくことで、テクニカルSEOの面でも効果が見込めると考えられます。

現行では、方針を策定して努力していることを明記するだけで問題ありませんが、今後の法改正に備え、また、より良いコンテンツ提供のためにもウェブアクセシビリティ対応を進めていくことが重要です。

当社では、ウェブアクセシビリティに対応したウェブサイトの制作が可能です。ご相談はこちらのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

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