紙メディアと電子メディア、どちらが優れている?

近年、ペーパーレス化の流れが加速し、これまで紙で提供されていた多くの情報が電子メディアで利用できるようになりました。
実際、雑誌や書籍、漫画などをスマートフォンやタブレットで読む人は年々増えており、20代の70%以上が紙よりも電子書籍を好むという調査結果が出ています。(参考:「20代の70%以上が紙より電子書籍を好む/10代には「コミックシーモア」が人気【ナイル調査】」|MarkeZine)
しかし、「紙メディアがそのまま電子メディアに置き換えられる」というわけではありません。それぞれに異なる特性や魅力があり、用途や目的によって使い分けることが重要です。
学校でもタブレットを用いた授業やアプリを活用した学習が一般化しつつありますが、少し前までは「ネットの情報は信用できない」といった、電子メディアに対する懐疑的な意見も少なくありませんでした。
本稿では、巷で噂される「紙メディアと電子メディアの違い」にまつわる代表的な意見について、検証していきます。
「紙メディアのほうが電子メディアよりも信頼できる?」
しばしば、「紙メディアのほうが電子メディアよりも信頼できる」と言われることがあります。
一概には言えませんが、紙メディアの方が信頼性が高い傾向にあることは否定できません。実際に、そのように考えている人が多いという調査結果が出ています。(参考:「令和3年 情報通信白書」|総務省)
紙メディアは、発行までに何度も校正・校閲が行われます。印刷物は一度印刷してしまうと簡単には修正できないため、制作・校正の各段階で慎重なチェックが重ねられます。
また、書籍であれば著者・発行者・印刷会社が奥付に明記されており、それぞれが内容の責任を担っていることが明らかです。もちろん人間の作業である以上、100%正確とは限りませんが、内容の精査は厳密に行われています。
一方、電子メディアでは更新や修正が簡単に行える反面、確認プロセスが甘い場合も少なくありません。特に個人ブログやSNSでは、著者一人の判断で情報が公開されることも多く、情報の正確性や信頼性は千差万別です。また、インターネットで見つけた情報には一見して信頼性があるように見えても、権威や根拠に欠けるものも存在します。
【結論】
電子メディアの方が誤情報や個人的見解が混在しやすい傾向にあります。ただし、紙メディアであっても誤りがゼロとは限りません。いずれにしても、情報の出典や裏付けを確認する姿勢が重要です。
「紙の方が誤字やミスを見つけやすい?」
明確な科学的根拠は厳しいものの、紙での校正の方が誤りを発見しやすいという意見は多いようです。
これは印刷会社である当社も同じ感覚で、「校正をする時は必ず印刷して見るように」と先輩方から教えられました。モニター上で修正前後のPDFを見比べるよりも、紙に印刷したものをチェックした方が、ミスが見つかりやすいというのが経験としてあるためです。
おそらく、紙を手元に置いた時の方が視線の移動が少なくすむため、ミスが見つかりやすいと考えられます。また、長年紙の校正に慣れていることもあり、手で赤字を書き込める紙の方が使いやすく、見落としが少ないと感じるのかもしれません。
とはいえ、AIによる誤字検出や自動校正ツールなども出てきており、電子でも一定の精度で校正は可能と言えます。最終確認として紙に印刷して確認する、というハイブリッド型の方法が有効かもしれません。
【結論】
理由は完全には解明されていませんが、紙の方が誤りを見つけやすい傾向にあります。(電子と紙のハイブリッド型の校正だとより安心)
「資料の保存は紙の方が安心?」
電子メディアは情報の共有や検索、整理といった機能面で非常に優れています。
例えば、文書内の特定のキーワードを検索する際、電子メディアでは一瞬で目的の箇所にアクセスできます。一方で、紙の場合は一つひとつ読み進めて探す必要があります。
また、電子メディアは物理的なスペースを取らず、サーバーやPCに多くの情報を保存できます。遠隔地との情報のやり取りも容易で、運用効率の面でも大きな利点があります。
しかし、電子データには消失や改ざんのリスクが伴います。サーバー障害、ハッキング、端末の破損などによって、重要な情報が失われる可能性は否定できません。実際に、電子カルテがハッキング被害に遭い、閲覧不能になるといった事例も報告されています。
【結論】
機能性や利便性の面では電子メディアに軍配が上がりますが、確実な保存・改ざん防止という点では紙メディアの方が優れているケースもあります。といっても、紙メディアでも紛失の可能性は十分にあるので、どちらが適しているかは、運用方針や状況によって変わると言えます。
まとめ
現在では、環境への配慮や効率化の観点から、社会全体がペーパーレスへと進んでいます。
しかし、紙メディアと電子メディアを比較した時、どちらが「絶対に優れている」ということはありません。内容が同じであれば、それぞれのメディアにそれぞれの長所があります。
例えば、多くの人に迅速に情報を届けたいなら電子メディアが適しています。一方、手に取ってじっくり読み込む体験を重視したいなら紙メディアの方が効率的です。
最も重要なのは、情報の中身そのものと、その情報をどう扱うかという視点です。目的に応じてメディアを選び、賢く使い分けることが、情報社会を生きる上で求められています。
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