印刷会社の制作という仕事柄、鉄道やバスの路線図を作る機会が何度かありました。
複雑になればなるほど難しく、いかに見やすくわかりやすく見せるかが腕の見せどころ。
各路線の色をしっかり区別し、路線の進み方、交わり方、駅の位置関係、接続駅の表現、路線名、駅名などを、見た人が理解できるようにグラフィックデザイン化するわけですが、修正作業も含めてけっこう手間のかかる作業です。
特にコンピュータ化する前は、ロットリングや、ラインテープを使って路線や駅を描き、路線名や駅名は一つひとつ写植で手貼りという版下作業。今考えると途方もない作業をやっていたわけです。
私の場合、特に鉄道ファンではないものの、常に路線や駅名については興味をもっています。
そんな私が最近の駅名について気になったことを、取り上げてみたいと思います。
どうなる「高輪ゲートウェイ」
何といってもいちばんの話題は、田町~品川間のJRの新駅「高輪ゲートウェイ」駅でしょうか? この駅名についてはインターネットを中心にいろいろな意見が続出。賛否両論あって当然だとは思いますが、駅名の公募に6万件集まったなかで130位だった「高輪ゲートウェイ」に決まったことで、反対意見のほうが多いようにうかがえます。
路線図を作る側に立つと、長い駅名「高輪ゲートウェイ」にさらに英語の「Takanawa Gateway」を現在の路線図に挿入するのはなかなか大変なのではと思ってしまいます。
新駅の予定としては、東京メトロ日比谷線、霞ヶ関~神谷町間に「虎ノ門ヒルズ」駅が来年東京2020オリンピック・パラリンピック前の開業が決まっています。JR東海道線、大船~藤沢間に仮称「村岡新駅」が2020年度中に、JR京葉線、海浜幕張~新習志野間に仮称「幕張新駅」が2024年にそれぞれ開業が予定されていますが、どんな名称になるのでしょう。
最近の駅名の傾向は
長い駅名やカタカナを加えた駅名は最近のトレンドなのでしょうか。東急田園都市線の「南町田」駅が今年中に「南町田グランベリーパーク」駅に変わるそうです。
新橋~豊洲間を走る「ゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)」の2つの駅名がこの3月に変わります。「船の科学館」駅が「東京国際クルーズターミナル」駅に、「国際展示場正門」駅が「東京ビッグサイト」駅に。
ちょっと古い話ですが、東京スカイツリーができたとき、東武鉄道伊勢崎線「業平橋」駅が「とうきょうスカイツリー」駅に変更。やはり目印となる大きな施設のほうに駅名が変わるのは、やむをえないのかもしれません。一方、東京東横線の「学芸大学」駅や「都立大学」駅のように、とっくに大学が移転してしまってもずっとそのままという駅もありますね。
京急の4駅も駅名変更へ
京浜急行電鉄は、創業120周年の記念事業の一環として2020年3月に4つの駅名を変更すると発表しました。沿線の小中学生を対象に行った「わがまち駅名募集」に集まった意見を参考に、さまざまなことを総合的に勘案し決定したとのこと。大師線の「産業道路」駅 が「大師橋」駅に、本線では、競輪場がなくなった「花月園前」駅が「花月総持寺」駅に、由緒ある名称の「仲木戸」駅が「京急東神奈川」駅に、逗子線の「新逗子」駅が「逗子・葉山」駅にそれぞれ駅名変更をするそうです。
「仲木戸」駅は明治後期にできた駅で、3年遅れて作られた横浜鉄道横浜線の起点で現在JR「東神奈川」駅の乗換駅でありながらずっと「仲木戸」を名乗ってきましたが、ついに「京急東神奈川」駅になってしまうんですね。
京急の逗子駅といえば…
逗子といえば駅名の変遷が半端でないことで知られています。
「新逗子駅」は1930(昭和5)年に湘南電気鉄道の「湘南逗子」駅として開業。2年後に路線の400m先に「湘南逗子葉山口」駅を開設。従来の駅は「湘南逗子沼間口」駅と改称。1942(昭和17)年に「湘南逗子沼間口」駅を廃止。「湘南逗子葉山口」駅を再び「湘南逗子」駅に改称。1948(昭和23)年に「湘南逗子葉山口」駅が「逗子海岸」駅に。さらに1963(昭和38)年に「湘南逗子」駅を「京浜逗子」駅に改称。1985(昭和60)年に、再び両駅を統合し、中間地点に「新逗子」駅を設置。そして、今回「逗子・葉山」駅に変えるという発表。
頭がこんがらかるような名称変更の歴史がありました。当社にも逗子から通っている社員がいますが、実際の住民はどう思っているのか、一度聞いてみようと思います。