【映画コラム最終回】マーベル・シネマティック・ユニバースの今までとこれから

コラム

これまで数々の映画コラムを執筆してきた、生産管理課のフカ

この『ヒラメキ工房』でも異質の、映画愛を存分に語った記事を書いてきてもらいましたが、8月末をもってヒラメキ工房を卒業。

最後に「集大成のコラムを執筆してほしい」と編集部から依頼したところ、とんでもない長文があがってきました…!

映画好き(特にマーベル好き!)な方はもちろん、映画コラムの集大成をぜひ読んでいってください!

マーベル・シネマティック・ユニバースの今までとこれから

退職前に最後のコラムを書いてくれ、という依頼が来てから何を書こうかしばらく考えていた。

入社からちょうど10年だし、10年分の映画を振り返ろうかとも考えたが、いざ手帳をめくると10年を振り返るのに「映画」という括りは大きく、早々に私の頭は狸寝入りし、心の方も仕方なしと頭を許してしまった。

そんな中、サンディエゴで開かれたコミコン(コミック・ブック・コンベンションの略称。ざっくり言うとコミック及び映像作品、ゲームなどを中心とした関連作品を取り扱う企業が今後の計画などを発表したり、ファンが交流をはかれるイベントを行ったりする展示会のようなもの)で、マーベル・スタジオが自社のアメコミ映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」(以下MCU)の今後の計画を大きく発表した。

その情報を見てウキウキしながら、昨年からシリーズに大きな変化もあったし、一度おさらいをしても良いかと思い、今回書く事にした。

MCUなんて固有名詞自体を聞いた事がないという人にも分かるように「①MCUとは」「②他の映画シリーズとの違い」「③近年の新たな試み」という形で解説し、最後に『①公開順MCU作品一覧』『②MCUスピンオフ(MCUとされているがシリーズとの繋がりが分かりづらい(分からない)作品)』『③MCU以外のマーベル・コミック原作の(基本実写の)映画作品』『④MCU以外のマーベル・コミック原作の(基本実写の)映画以外の作品』『⑤今後の作品』という分け方で作品一覧を作成してみた。

※解説③「近年の新たな試み」にはシリーズの特性上、ネタバレを含まざるを得ないので、気になる方は読まないでいただきたい。

・気になっていたがどのタイトルがシリーズ作品なのか分からない
・観る気はないがどういうシリーズなのかは知っておきたい
・シリーズを観ているが最近の展開についていけていない
・今更解説してもらうまでもないが自分が観漏らしている作品がないかチェックしたい

など、何かしら皆さまのお役に立つ記事になっていれば幸いである。

①MCUとは

アメリカの大手コミック会社「マーベル・コミック」が、自社の映像作品制作スタジオ「マーベル・スタジオ」で制作したコミックの映像化作品シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」の略称。

元々、マーベル・コミックは自社のキャラクター権を映画制作会社に売っていたが、どんなに作品が当たっても当初の契約に沿った収益しか入らず、また作品のクオリティコントロールもできないという不満があった。
とはいえ自社で映画制作を行うのはリスクが高いと思われていたので、手を出していなかった。

しかし、権利を売った場合、制作費の負担はないものの契約料しか入らず、関連商品も映画会社との折半となるのが、自社で制作する場合はキャラクター権の費用はかからず、制作費の負担はあるが興行収益が直接利益につながり、更に関連商品の収益も制作会社との折半ではなくなるため、自社で制作した場合、他社で制作した場合より多少興行成績が悪くとも権利を売った場合と同等の収益が得られる見込みが立った。

ただこの段階でマーベル・コミックには映画を制作できるだけでの資金はなく、まだ売っていなかったキャラクターの映画化権を担保に、投資銀行「メリルリンチ」からの融資を受け、更に完成した作品の海外における配給権を事前に販売することで、2005年に制作費を作り出した。

その後、制作され2008年に公開となった「アイアンマン」を1作目とし、シリーズが始まる。

なお、この後の解説に関係するため、映画化権を売ったキャラクターと、購入した会社の代表的なものを下記に記載する。

20世紀フォックス:X-MEN、ファンタスティック・フォー
ユニバーサル・ピクチャーズ:ハルク
コロンビア映画(ソニーグループの子会社):スパイダーマン、ゴーストライダー

②他の映画シリーズとの違い

まず、アメリカのコミックの特徴として、各キャラクターの権利を会社が持っているというのがある。

そのため各キャラクターが共演することが可能であり、たとえばA、B、Cという3人のキャラクターそれぞれ単独の作品の他に、A、B、Cの3人が共闘する作品があったりもする。
つまりは、各キャラクターが同じ世界に存在する設定になっている。

このフォーマットを直接映画に持ち込んだのが、それまでの映画シリーズとの決定的な違いであり、同じ形式のシリーズものを「ユニバース」という名称で呼ぶ。

代表的なユニバースとして、マーベル・コミックのライバル会社であるDCコミックスの作品を映画化した「DCエクステンデッド・ユニバース」、ワーナーとレジェンダリーが製作し2014年に公開した「GODZILLA ゴジラ」から始まるモンスター・ヴァースがある。

複数の作品によって物語を紡いでいくため、各キャラクターの掘り下げや関係性の変化を深く観せることができ、観たかったキャラクターの共演、意外なキャラクターの共演を観る楽しみもある。

その反面、いろいろな都合から破綻のない一貫した物語を作るのが難しかったり、そもそもシリーズ途中の作品であればその作品だけを観てもよく分からない作品もあるため、作品を重ねるほど新規顧客にはハードルが高くなっていくという弱点もある。

その点、14年以上続きながら衰えることなく未だに拡がり続けるMCUは、映画史における一つの奇跡といって過言ではないと思う。

③近年の新たな試み

MCUは映画1作目の「アイアンマン」から23作目「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」までを大きな一括りとして「インフィニティ・サーガ」と呼ぶのだが、これ以降、大きく二つの新たな試みが行われる事になる。

・配信ドラマという形式での新作の公開

・MCU以外のシリーズ作品のMCUへの参入

上記2点になる訳だが、1つ目はサブスクリプション・サービスの台頭に伴い、ディズニーが始めた「ディズニー+(プラス)」という配信サービスの影響が大きい。

マーベルは2009年にウォルト・ディズニー・カンパニーに買収され、現在はディズニーの子会社なので、マーベル作品はディズニーによって配給されている。
必然、配信もディズニー+によって行われているのである。

このディズニー+の目玉の一つとして、MCUオリジナル配信作品の独占配信があり、MCUというシリーズを追っていく上でディズニー+に入会するのは必須となっていると言ってよい。

2つ目が前述で「ネタバレ」と書いた部分であり、MCUだけを追ってきた人の中にはよく分からない人もいるかもしれない点だ。

解説の①で書いた通り、自社制作以前のマーベルはキャラクターの映画化権を他社に売っていた。
そのため、自社で映画化できないキャラクターが複数存在しているのである。

その代表的なキャラクターがスパイダーマンであり、MCUのスパイダーマン作品はマーベル単独作品ではなく、ソニーとの共同制作という形をとっている。
ちなみにソニーは自社製のマーベル映画シリーズも展開している。
それらの作品も後述の一覧に載せたので参考にしていただきたい。

さて、スパイダーマンのようにソニーと共同制作という形をとることで新作も作っていたわけだが、前述の通り、ソニー独自のシリーズや、更に以前に制作した別のスパイダーマンシリーズもあるわけだ。

さらに20世紀フォックス(現20世紀スタジオ)は2019年にディズニーに買収されており、それによって20世紀フォックスが所有していたキャラクターの映画化権や20世紀フォックスが制作したマーベル・コミック原作作品の配給権は、現在ディズニーが持っているのである。

つまり、20世紀フォックス制作作品をMCUのシリーズに組み込んだり、新作を作る事が権利上可能になったということなのだ。

ただ、ここで一つ疑問が浮かぶ方もいるかと思う。
例えば「既にMCUというシリーズの中にスパイダーマンがいるのに、他のシリーズのスパイダーマンが出てきたらスパイダーマンが二人になってしまうのではないか、それはおかしいのではないか」と。

おかしくないのだ。

そこで出てくるのが「マルチバース」という概念。
ざっくり言うと、この世界に無限と言っていいような沢山の宇宙が存在しているという話で、誰もが日々選択をしながら生きていると思うが、この概念上では今の自分が選択しなかった事柄を選択した他の宇宙がある、というものなのだ。

その概念をMCUは世界観として採用しており、つまり他のスパイダーマンが何人出てこようと他の世界のスパイダーマンとして成立するわけだ。

以上のように、配信ドラマでもシリーズが展開し、元々はシリーズの一部ではなかった作品もシリーズの一部に取り込むという、これまた史上初と言ってよい試みが、ここ2年位で始まった。

さらに先日のサンディエゴ・コミコンで2025年11月公開予定「アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ(原題)」というタイトルの作品が発表された。

シークレット・ウォーズは原作ではマルチバースを巻き込み色々なキャラクターが登場する大事件であり、映画版も過去の全作品のキャラクターが登場するような事態になる可能性がある。

シリーズを網羅しようと考えるとどれくらいの作品数を観なければならないのか、マルチバースのことを考えるのと同じくらい気が遠くなってくるが、そんな膨大な作品数を包括するシリーズもあるのかと、まずは知っていただければ嬉しく思う。

これを機にチェレンジしてみようと思った方は、2025年のシークレット・ウォーズに間に合わせるのを目標に、観始めてみてはいかがでしょうか。


以下、作品一覧。

※MCU以外の作品に関しては私の独断と偏見で今後MCUに関わる可能性があるのかを10段階(★が2、☆が1)で評価し、理由を記載した。
※配給権に関しては間違っている可能性もあるので、記載したのに申し訳ないのだが参考程度に見ていただきたい。

画像をクリックすると拡大して読むことができます。

①公開順MCU作品一覧

②MCUとされているがシリーズとの繋がりが分かりづらい(分からない)作品

③MCU以外のマーベル・コミック原作の(基本実写の)映画作品

④MCU以外のマーベル・コミック原作の(基本実写の)映画以外の作品

⑤今後の作品

TAG:映画 

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