文字・数字以外の記号「約物」
「約物」と書いて「ヤクブツ」ではなく「やくもの」。PCの文字入力で「やくもの」の変換が「焼く物」や「妬く者」などとなるところをみると、この印刷用語は一般にはあまり浸透していない語のようです。
約物という言葉はなぜ生まれたか
明確な語源を記したものはなく、おそらく「約」の「しめくくる」「まとめる」といった意味から生まれたと思われる「約物」は、印刷の文字組版などで文章の記述に使用する記号類の総称として使われています。
活字の時代、活字は1文字ずつ全角ですが、約物は2分の1、3分の1のものも多く、空いた部分に込め物を足して、組版を整えました。つまり「約物」は、活字棚から文字を拾う「文選」や、それらを組む「植字」といった作業がされていた時代の印刷用語です。
「約物」の代表的な例
まずは、句読点。「。」呼び名は「句点」または「マル」
「、」は「読点」または「テン」
文や語を区切る記号として他に
「・」は「中黒」または「中ぽつ」
「/」は「スラッシュ」
注意書きにはこれ「※」の「米印」
「~」は「波ダッシュ」
「・・・」は「3点リーダー」
「!」は「感嘆符」または「エクスクラメーションマーク」ですが「雨だれ」がよく使われます。
同様に「?」は「疑問符」「クェスチョンマーク」ですが、「耳だれ」とも呼びます。
因みに「!?」は「ダブルだれ」。
ここまでの記述でもわりと頻繁に使っている便利な「 」は、一般的には「かぎ括弧」。「カギ」「引っ掛け」などとも呼ばれています。
『 』は「二重カギ」。
括弧のついでに( )は「丸括弧」ですが、印刷の世界では「パーレン」がよく使われます。英語の”parenthesis”が略され訛ったもの。
同じパーレンでも〔 〕は「亀甲」
【 】は「隅付き」
[ ]は「角」と形を表した呼び名。
「〝 〟」「” ”」は「ちょんちょん」と呼ばれていますが、正確には前者が「ダブルミュート」、後者が「ダブルクォーテーションマーク」。
前の文字を繰り返す時使う「踊り字」は「々」が「同の字点」または「漢字返し」
「ゝ」や「ヽ」は「一の字点」
「〃」は「ノノ字点」と呼ばれています。
文字コード化される約物
コンピュータの発展とともに「約物」も文字コード化され、インターネットや電子メールなどの発展で、印刷や出版に関らない人が文字コードを扱う機会が増えたため、「♥」や「♪」や絵文字など、さまざまな記号が「約物」的に扱われるケースも増えてきました。
特に若い層を中心としたコミュニケーションの手段としての絵文字、顔文字の出現に「約物」が果たした役割は大きいと思われます。