市松模様が意外なところに。Photoshopの透明表示。

コラム

白紙撤回された2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会エンブレム。14,000点を超える再公募作品が集まり、残った最終候補 4 作品の中から紺の「組市松紋」の作品に決定しました。いろいろ意見はありますが、形の異なる長方形を組み合わせたエンブレムには、奥ゆかしさや緻密さ、繊細さなどに日本らしさが感じられます。

市松模様とは

「市松模様」は、ご存知のように碁盤目状の格子の目を色違いに並べた模様ですが、古代より織模様として存在しており、古くは「石畳文様」と呼ばれていました。
江戸時代の歌舞伎役者初代佐野川市松が、江戸中村座での近松門左衛門「心中万年草」の舞台で白と紺の「石畳文様」の袴を履いたことから人気を博しました。市松はその後もこの模様を愛用し、浮世絵師がその姿を描いたことから着物の柄として流行しました。
もちろん、日本独特の文様ではなく世界中にあることは周知の通り。英語では「Checker」と呼ばれ、紀元前3000 年頃の洞窟の壁画にも描かれており、中世ヨーロッパでは国旗や、王、貴族の紋章の一部などに使われていました。現在もクロアチアの国章に使用されていますし、チェス盤やカーレースのチェッカーフラッグなど、さまざまなところで使われています。

作業現場で使われる市松模様

さて、そんな「市松模様」が、印刷の制作現場で使われているのをご存知ですか。デザインやレタッチ、DTP 作業などで写真編集の役割を担う「Adobe Photoshop」などのグラフィックソフトウェアにおいて、画像の一部が透明であることを示すために「白とグレーの市松模様」が表示されます。なぜ「市松模様」なのか、普段ソフトを使っている制作スタッフでもなかなか答えられない疑問でしたが、実はこの表現は「Photoshop」の開発者によると、生物学などのバイオロジー(Biology)の分野から来ているといいます。
この学問では、観察対象を研究・分析する際、白地や黒地ではなく、透明なガラスの下に白黒のチェッカーボードを敷いて物を置くという方法がとられていて、そのことにヒントを得たそうです。しかし、白と黒では目がチカチカしたため白とグレーになったというのが真相のようです。
開発当初は、透明も白で表していましたが「白と透明は違う」ことを表現したくて、この透明レイヤーを作ったといわれています。しかも画像を拡大しても模様は常に同じ大きさ。画像の一部とは違うことを認識しやすくしています。普段何気なく使っているものにも意外なエピソードがありました。

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