グラフィックデザインの歴史を検証してみたVol.2

コラム

Vol.2 19世紀から20世紀へ、グラフィックデザインにさまざまな様式が
万国博覧会からアール・ヌーヴォーまで

1851(嘉永4)年、印刷の活字に着目した江戸幕府の通詞、教育者の本木昌造が、オランダ活字を手本に活字を製造した年に、世界初の博覧会、「第1回ロンドン万国博覧会」が開催されました。博覧会では、イギリスが自国の工業力を世界に示す機会となりましたが、印刷技術の進歩による宣伝効果の開花が目立ち、ポスターをはじめ、パンフレット、カタログなどたくさんの印刷物が来場者に配布されたといわれています。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパを中心に広まった国際的な美術運動が「アール・ヌーヴォー」。花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線を用いて、様式に捉われない装飾性が特徴で、建築工芸品などとともにグラフィックデザインにも及びました。アール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナーが、多くのポスターや装飾パネル、カレンダーなどを制作したアルフォンス・ミュシャ。美しい色彩と流れるような曲線が特徴のミュシャの作品は、人々の暮らしを彩り、デザインは世界中に広がりました。

日本でも雑誌「明星」の挿絵を担当していた藤島武二をはじめ、ミュシャに影響を受けた作品が数多く描かれ、近代に至るまでグラフィックデザインの一つのお手本とされてきました。

20世紀初頭のグラフィックデザイン

20世紀初頭にはさまざまな美術様式が生まれます。イタリアで始まった「フトゥリズム」、ヨーロッパ、アメリカで起こった「ダダイズム」、その他にも「シュールレアリスム」「キュビズム」「アバンギャルド」など、さまざまな芸術表現の影響を受けたデザインが出現しました。

1925(大正14)年に開催されたパリ万国装飾美術博覧会を機に、ヨーロッパやアメリカを中心に発展した「アール・デコ」が流行。装飾を排除した幾何学図形のモチーフが特徴のアール・デコを代表するグラフィックデザイナーは、フランス人デザイナーのA.M.カッサンドル。デザイン界に革命を起こした時代の寵児などと称されています。最も有名なカッサンドルの作品は、鉄道や船などのポスター。デザインに興味を持つ人は必ずどこかで目にしているはずです。

そのアール・デコが再び脚光を集めるのは1960年代。この頃から、アール・デコの機能的でシンプルなデザインに多くのグラフィックデザイナーたちがインスピレーションを受け、その後ブームは収まりましたが、レトロな印象を新鮮と感じるアール・デコ風デザインは、現在に至るまでさまざまな分野のデザインに存在します。

日本のデザイン史に大きな影響を与えたウィーン万博

日本は1867(慶応3)年の「パリ万国博覧会」に江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展。その後、1873(明治6)年に開催された「ウィーン万国博覧会」において、近代国家として歩み始めた日本は、初めて公式に参加しました。「文化と教育」というテーマに沿って企画された日本の会場には、上質な浮世絵を始めとする美術品や工芸品を展示されました。

特に葛飾北斎を始めとした浮世絵は、大胆な構図や色鮮やかな色面構成がヨーロッパで大きく関心を集め、「ジャポニズム」と呼ばれるようになりました。

このウィーン万博が日本のデザイン史に大きな影響を与えたことはいうまでもありません。

しかし、当時の日本には「デザイン(design)」という概念はなく、画家出身の官僚で、万博に同行した納富介次郎は、「図案」という言葉に置き換えました。

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