校閲ガールは推理もする?

コラム

印刷についての学ぶべきことは、数えきれないほどあり、毎日が教え、教えられることの連続なのですが、後輩に教えた時は、「今日、教えたことがしっかり理解できてるかな?」と日報をチェックすることがあります。

ある日、後輩の日報にこう書かれていました。
『●●と●●は繁っているのだと分かった』

「しげっている」?
当社の日報は、漢字などを正しく書けるようになって欲しいという思いもあり、手書きで書くことにしていますが、一体何と間違えたのか。
後輩に確認したところ、この時は漢字の形がよく似ている「繋がる」と「繁る」を間違えていたことが分かりました。

実は、こういった間違いは、よくあるのです。
例えば、赤字を書く時ついつい「借りる」「貸す」の漢字を間違って書いてしまったり。
形の似ている別の漢字を書いてしまったり、パソコンでも、うまく変換できずに、間違った原稿があったり、こういった間違いは、人間が文章を書く限り、なくならないと思いますが、間違った文章を読んで、正しい文章を予測し、直すことができるのも、人間なのです。
実は、校閲をするときには、「本当は何を書きたかったのだろう」と、こうした推理を働かせることも重要です。

よくある間違いとは?

手書きの原稿でついつい書き間違えてしまう漢字で多いのは「紫」「柴」や、「績」や「積」など、辺とつくりのどちらかがあっていて、どちらかは間違っているというもの。パッと見た限りでは一見してあっているように見えていることもあるので、注意が必要です。

また、地名も良くある間違いの一つ。例えば、「霞ヶ関」「霞が関」と「ヶ」と書くか「が」と書くか。駅名と住所で表記が違うということもあり、非常に間違いに気付きにくいものです。

その他にも慣用句は、多くの人が誤用しているものもあり、間違いに気付きにくいことが有ります。
例えば「うがった見方をする」という表現。あなたは言われて嬉しいと思うでしょうか?
「うがった見方」の正しい意味は「物事の本質を的確に捉えた見方をする」という意味なのですが、2014年の文化庁広報誌によると、本来とは異なる「疑って掛かるような見方をする」という意味で理解している人の方が多いことが分かったとのことです。
(文化庁広報誌2014年7月2日:http://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_002.html
このように、本来は別の意味合いで使われていた言葉が、時を経て、違った意味合いのほうが世間一般に広まってしまう。ということも多々あります。新しい意味合いや、新しい言葉が生まれてくるのは言語が進化してきていると言えるかもしれません。

間違いを防ぐには?

ではどのようにしたら、間違いのない、美しい日本語を書くことが出来るのでしょうか?
ライターではない、印刷会社とは言え、お客様のためにも出来るだけ、校正の段階で間違いを直しておきたいもの。そこで、毎日新聞社の校閲グループの方の講演に足を運び、校閲のコツを拝聴したところ、チェックする人間が「よく間違いやすいもの」を知っておくこと。「正しい日本語」を知っていることが大切だとのこと。なるほど、機械ではできない作業だけに、自分を磨かなければいけないのだな。ということを改めて考えさせられました。そのあたりはもしかしたら、鋭い観察眼を磨く探偵と似たところがあるのかもしれません。

ちなみに私が校閲について勉強をしたのは、毎日新聞社様の校閲グループが発行している「校閲記者の目―あらゆるミスを見逃さないプロの技術」という本です。内容は大変勉強になり、合間合間のコラムもクスッと笑えるものが多く読みやすい一冊です。ご興味のある方は一度読んでみてはいかがでしょうか?

また、本だけでなく、最近はTwitterなどでも新聞社の公式アカウントで正しい日本語の使い方を発信しているようです。試しに一つフォローしてみると、間違って使っていた言葉やちょっとした話のネタにもおもしろいかもしれません。

TAG:校正 校閲 

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