「『アラベスク』をご存じですか?」という問いに、1980年前後のディスコ音楽をイメージする方、クラシックバレエの基本姿勢を思い出す方、華麗に装飾されたクラシック音楽を想像される方…と、さまざまだと思います。
もちろんすべて正解ではありますが、「アラベスク」の語源は「アラビア風の」という意味で、一般的にはヨーロッパ調の唐草模様のことを指します。
アラベスク模様と唐草模様の関係
「ヨーロッパ調の唐草模様」とは、いったいどういうことなのでしょうか?
唐草模様はアジア特有のデザインに思われがちですが、実は古代エジプトで生まれ、その後ヨーロッパやアジアに広がりました。
基本はモスクの壁画などに見られるイスラム美術様式の一様式で、蔦や葉、花が複雑に絡み合う幾何学的な文様は、イスラムの世界観に基づいています。
アラベスク模様の輸入、そして日本の唐草模様へ
そんな「アラベスク模様」がシルクロード経由で中国から日本に伝わったのは、5世紀頃の古墳時代。
高松塚古墳などからも出土している、「海獣葡萄鏡」の葡萄の紋様が唐草模様になっています。
やがて日本独特の花鳥風月を題材にした「吉祥紋様」が使われ、特に蔓草の生命力を発展に結びつけ、茎をどこまでも伸ばしていく唐草模様が、「長寿」「延命」「子孫繁栄」の象徴とされ、さまざまな日用品などに使用されるようになりました。
そして、「緑地に白で唐草模様がデザインされた風呂敷」が、明治から昭和にかけて大量生産されたおかげで、誰もがご存じの、あの「泥棒が背負っている風呂敷包み」が誕生したというわけです。
つまり当時の泥棒は手ぶらで家屋に侵入し、まず盗んだものを持ち運べる大判の風呂敷を探した。
そこで、だいたいどこの家にもあった風呂敷が利用されたというわけです。
世界を制した普遍的なデザイン「アラベスク模様」を調べてみると、日本独特のシンプルな吉祥紋様に仕上げた唐草の風呂敷につながりました。
海外のものを輸入して、日本独自のものに落とし込むのはやはり日本らしいとも言えます。
当社はデザインから請け負う印刷会社。
古くから受け継がれているデザインを大切にしつつ、新たな着眼点でのデザインも、生み出していく必要があると改めて感じました。
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