「大人っぽいスタイリングにしたいので、グラデーションカラーでお願いします」
この注文にすべての美容師さんが対応できるかはわかりませんが、髪の根元から毛先に向けて少しずつ明るく見えるようにするカラーリングがオシャレ度をアップさせるとか。
グラフィックやファッションはもちろん、照明、インテリア、建築からヘア、ネイル、メイクアップなど、「グラデーション」はデザインに欠かせない表現のひとつです。
今回は、その「グラデーション」がどういう意味なのか、また、歴史の中でどう発展してきたのかを調べてみようと思います。
グラデーションとはどういう意味?
「グラデーション」は、印刷・美術・デザイン用語などで使われる「規則的に色濃度を変化させたもの」「階調」「連続階調」という意味で呼ばれるもので、色の濃淡、明暗、色彩などの規則的・段階的な変化を指す言葉です。
英語の「gradation」についての語訳を見ると、もともとは「順序立て」「段階付け」という意味。
語源は、歩み、過程、舞踊のステップなどを意味するラテン語の「グラドゥス(gradus)」で、それから派生した英語は多く、「grade(階級・品質・進行度)」「gradient(傾斜・勾配)」なども同じ語源です。
少し似た言葉に、卒業や卒業式を意味する「graduation (グラデュエーション)」があります。「u」が入るか入らないかの違いですが、こちらも語源は一緒です。
日本におけるグラデーションの使われ方
「グラデーション」は、古来からあった「繧繝」という彩色法に近く、中国の唐時代に発達し、奈良時代前期に日本に伝来。同系色の色を淡色から濃色へと並べ、色彩の濃淡の変化を表す彩色法は、工芸や建築、仏画などに用いられました。
また、日本画の表現技法の一つ「隈取り」は、「暈」ともいい、 色彩で濃淡や陰影をつける「隈取る」が名詞化したもの。先に塗った画面上に、水分を含んだ筆や刷毛でぼかしていくというこの技法も「グラデーション」といえます。
江戸時代に成立した絵画様式の浮世絵も「グラデーション」なしでは語れません。
顔料に含まれる水分量の調整と、摺りの力加減で表現する「ぼかし摺」などは世界に誇れる技術といえます。浮世絵は19世紀末頃のヨーロッパの画家たちに大きな影響を与えました。
このように歴史も深く、元々アナログ的な「グラデーション」表現ですが、コンピュータの出現によってCGで再現できるようになりました。
限られた量のメモリしかなかった時代には中間色を細かく表現できませんでしたが、最近は高性能化に伴ってすべての分野で表現技術が向上し、「グラデーション」が扱いやすいものとなりました。
グラデーションのデザイン事例
さて、このような意味や歴史のある「グラデーション」ですが、現代のデザインでも多数使われています。
当社は印刷会社ですが、「グラデーション」を使ったデザインを手がけることも少なくありません。
その制作事例を一部ご紹介します。
鮮やかなピンクとブルーの「グラデーション」がきれいな、サービス紹介のリーフレットです。
印刷はデジタルプリンタで行っており、発色も良く、目にとまるリーフレットに仕上がりました。
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さらにこちらは、印刷機に複数のインキを投入して作った世界に一つしかない「グラデーション」です。
IllustratorやPhotoshopといったアプリケーションで「グラデーション」を作るのではなく、インキの自然な混ざり具合のみで作られた「グラデーション」です。
印刷課の社員による実験的発想で生まれた産物。次も同じものが作れるかどうかわからないという、遊び心のある作品です。
▼制作過程はこちらの記事をご覧ください。
もちろん、印刷物だけではありません。
当社のコーポレートサイトでは、ヘッダーに「グラデーション」を使用しています。
色の上に文字が乗っているだけですが、複数の色が混ざり合っていることでお洒落に感じます。
「グラデーション」はシンプルさと華やかさ、どちらも両立できるデザイン手法と言えそうです。
▼野毛印刷のコーポレートサイトはこちら
デザインに欠かせない手法のひとつ「グラデーション」は、時代とともに変化してきました。
歴史や変化の過程を知ると、ふだん目にしているデザインや印刷物ももっとおもしろく感じられます。
当社は、クリエイティブの力でお客さまの課題解決に取り組んでいます。
もちろん「グラデーション」を活かしたデザインも可能です。
印刷物やWEBサイトなどのデザイン・制作のご相談は、こちらのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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