古くから四季の移ろいや独特の文化のなかで愛されてきた「日本の伝統色」。
そのなかで春を表す色の代表が桜色であることは、誰もが認めるところでしょう。
桜の花びらの淡いピンク色も含めて、デザイン表現で春らしさをイメージさせる際に使用する色の定番といえば「パステルカラー」。
ご存じのように、赤や緑、青、黄、緑のような明確な色合いではなく、白色を混ぜたような色彩を「パステルカラー」と呼んでいます。
淡いピンク色のほかに、クリーム色、ペパーミントグリーン、ライトブルー、パープルなど、明るくやわらかい印象の色を指します。
今回はそんな「パステルカラー」の語源や、人々にどう浸透していったのか、といったことを考察していこうと思います。
パステルカラーの「パステル」とは?
はじめに、パステルカラーの「パステル」とは何なのか。
もともとは「塗り固めたもの」を意味するフランス語「pastel」が由来とされています。
英語の「ペースト(paste)」は「糊状のもの」とか「貼り付け」などの意味がありますが、語源は一緒のようです。
これがイタリア語になると「パスタ(pasta)」の由来になるようですね。
そもそも「パステル」とは、乾燥した顔料を粉末状にし、粘着剤で固めた画材のこと。
クレヨンよりは粉っぽくてチョークに近く、発色がよく色数が多いのが特徴。
パステルの描き方は基本的にクレヨンと同じですが、削って粉にしてコットンや指で馴染ませる方法など、さまざまなテクニックが必要な奥の深い画材です。
パステル画の歴史は、美術史上最古の絵画技法とされるギリシャ時代の「蠟画」とも呼ばれる「エンカウスティーク」だという説があります。
しかし、15世紀にパステルの作り方を示したレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿があったことから、その頃を起源とする説が有力です。本格的に流行したのは18世紀中頃から19世紀にかけて。
油彩や水彩のように混色をしないため、鮮やかな色調で描けるパステル画に新しい魅力を感じた画家が登場。エドガー・ドガやオディロン・ルドンなどが描いた代表的な作品が世に出ています。
日本のパステル画の先駆者は大正期に海外に渡ってパステル画に魅せられた矢崎千代二。
パステルの国産化を実現し入門書を出版、講習会や展覧会を開くなど日本での普及に貢献しました。
1929(昭和4)年には「日本パステル画会」を設立しています。
そして「パステルカラー」が誕生
パステル画は戦後に少しずつ広まっていきましたが、それよりも早く、戦後間もない時代に生まれたのが「パステルカラー」「パステル調」という色調を表す表現です。
ファッションへの関心がようやく高まり始めた頃、欧米の映画や雑誌に影響を受けて、日本のファッション業界から流行色という概念が生まれています。
強い色調の原色ではなく明るく穏やかな色調を、パステル画の特徴である淡い中間色の色調に重ねて「パステルカラー」「パステル調」という表現が使われ始めたと考えられます。
いかがでしたでしょうか?
「パステルカラー」という表現は戦後に生まれ、ファッションの発展とともに人々の中に広まっていったと考えることができるでしょう。
当社は印刷会社ですので、パステルカラーを中心としたデザイン・制作をすることもあります。
印刷物やデザインでお困りごとがありましたら、お気軽にご連絡ください。
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