入稿とは?使う人によって意味が異なる不思議な言葉

コラム

「入稿(にゅうこう)」という言葉を、皆さんはどのように使っていますか?
実はこの「入稿」、現在では、業界や立場によって使い方が異なる、不思議な言葉になっています。

例えば、ある広告代理店では、

「○○会社さまの原稿が入稿するので、当社のディレクターがチェックした後に、そちらに入稿します」

と制作会社に連絡。
それを受けた制作会社は印刷会社に対して

「□□広告代理店さまの原稿が入稿するので、DTP作業後に校了になり次第、入稿します」

と伝える……。

まるで冗談のようなやり取りですが、実際の現場で起きている話です。

「入稿」とは誰がどのように使う言葉なのか?

本来「入稿」とは、編集者やデザイナーが、組版(DTP)部門に原稿を入れることを指していました。
しかし現在では、業務フローの中で「次の担当者に原稿を渡すこと全般」を「入稿」と呼ぶケースが多くなったために、それぞれの立場で使いながら、誰もが何となく理解できる言葉になっています。

つまり、「入稿とは何か?」という問いに対しては、その人の立場によって答えが異なるのです。
例えば、

・クライアントから制作会社に原稿が届くとき
・デザイナーから印刷会社にデータを渡すとき
・ライターが出版社に原稿を納品するとき

このすべてが「入稿」と呼ばれることがあるのです。

「入稿」と「出稿」の違い

「入稿」は「原稿を入れること」ですが、「原稿が入ること」にも使われます。
さらに混乱を招くのが、「出稿」という言葉との違いです。
原稿を印刷所などに出すという意味で「出稿」という言葉を使う人もいますが、どちらかと言うと、新聞・雑誌などに広告を出すことを「出稿」と言うケースの方が圧倒的に多いです。

入稿:印刷や制作のために、原稿やデータを渡す行為
出稿:主に新聞や雑誌などの広告枠に広告原稿を出す行為

また、印刷業界では最終的に印刷工程に進むタイミングを「下版(げはん)」と呼ぶこともあります。
当社では、クライアントから原稿を受け取るときは「入稿」、印刷工程へ進むときは「下版」と明確に使い分けています。

最近では、「入校」という表記も見かけますが、単なる変換間違いではないかと思っていたところ、校正チェックの際に赤字を入れることを「入校」と呼ぶところもあるようです。
当社では使わない言い方ですが、いずれにせよ、用語の種類や用途は業界ごとに曖昧なまま使われているのが現状です。

まとめ:「入稿」は立場によって意味が変わる言葉

「入稿とは何か?」という問いに明確な答えを出すのは難しいかもしれません。
しかし用語の曖昧さによって、作業の遅延やミスが発生することもあります。

だからこそ、「入稿」という言葉を使うときには、その定義やタイミングを関係者間でしっかり共有しておくことが重要です。

 

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スローニン
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ずっと制作畑を歩み続ける謎の素浪人。
スローな生き方を好む素老人でもあります。

特技というほどではありませんが、
ネット検索の裏ワザを駆使することができます。
カラオケボックスで10時間歌い続けることができます。
横浜の歴史にはわりと詳しい方です。

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