【印刷会社に勤めて約30年!】印刷の歴史を現場目線で振り返ります

コラム

こんにちは。業務改革室のアオキです。
私は印刷業界で30年ほど働いていますが、今日までさまざまな工程の仕事を経験してきました。
そんな私から、「印刷業界の歴史・変遷」をお話させていただこうと思います。

ちなみに、このヒラメキ工房では度々「印刷の歴史」に関する記事をアップしてきました。

【9月は印刷月間】「印刷の月」にちなんで、印刷産業の歴史を振り返る

ですが今回は、「約30年、印刷業に携わった現場目線」で、印刷の歴史をお話させていただこうと思います!ぜひ最後まで読んでいただけたら、幸いです。

Macがなかった時代の印刷会社の仕事

今は当たり前のように、MacやWindowsでデザインから印刷用のデータまでを制作できますが、私が入社した平成元年の野毛印刷では、それぞれの制作過程で工程が細かく分かれていました。
全てがアナログで、各工程にその道のプロがいた時代です。

特に写真植字、版下、製版にはこだわりの職人さんが沢山いました。
版下のプロは、版下に線を引くときに今のようなペンは無く、「カラスぐち」と「ガラス棒」「溝引き定規」を駆使して真っ直ぐな線を引いていました。

カラス口(ぐち)

写植のオペレーターは、レイアウトの手書き文字を級数表で図り、丁度良い大きさで、長年の経験と勘で植字・印字をしてくれました。

級数表

製版では、色指定通りにフィルムに網点を貼り、何回もフィルムを貼ったり撮影したりを繰り返して、フィルムを完成させていました。

網点

その版をPS版に焼き付け、印刷工程へ。
印刷して初めて色が重なり、思い通りの時もあれば、イメージと違う時もありました。

現在と比べると、工程が細かく分かれ、とても手間がかかっていました。
印刷工程で大きく変わったのは、主にデザインから面付のところまでが集約・統合されて、一括作業が可能になったことだと思います。
試しに、30年前と現在の工程の比較を表にまとめてみました。

工程の比較

30年前 現在
①  社内伝票 手書き(複写伝票) 基幹システム
②  デザイン 全て手書きで表現 画面上・ソフト上で作成
③  写真 レンタルポジ、紙焼き 素材データ、スマホ
④  スキャニング 写真分解・フィルム出し ほとんどない
⑤  レイアウト 手書きしたものに級数指定・文字指定 画面上・ソフト上で作成
⑥  文字 写真植字(印画紙) キーボードで入力
⑦  版下作成 版下台紙に印画紙を切り貼り 画面上・ソフト上で作成
⑧  校正 版下を複写機で複写(ゲラ)
校正マンによる校正
カラーコピー、PDF校正
デジタル検版
⑨  色指定 版下にトレペを被せてカラーチャートに準じたC100M90Y80と色指定を手書きで記入 画面上・ソフト上で色選択
⑩  製版 フィルム製版(ポジ製版・ネガ製版) 画面上・ソフト上で作成
⑪  色校正 カラーキー、コンセンサス インクジェット出力・DDCP
⑫  面付 版下上で面付したものを撮影
またはフィルム上で面付
DTPソフト上で
または面付ソフトで面付
⑬  刷版 PS版 CTP
⑭  印刷 単色機、2色機、4色機 UV機、8色機
⑮  製本 折り機、綴じ機 折り機、綴じ機、型抜き機、ラミネーター
⑯  納品 自社配送、営業車で納品 宅急便が主流

Macが導入されてこう変わった!

野毛印刷では、25年ぐらい前に初めて、Macが導入されました。
最初の仕事は、地図のトレース。フロッピーディスクにデータを保存して、近くの出力センターへ走る、なんてこともありました。

東京の恵比寿でMacの講習会に参加して、その後は独学で必死にMacに向かいました。
当時は周りに聞く人がいなっかたため、自力とネットの検索で、全く面識のない人にメールやTELで相談して、解決していました。

その翌年、制作人員は1人から5人に増員し、Macも増設。

画面上でレイアウト・文字・色をつけて写真を貼り込めるので、従来1週間かかっていた作業が、2~3日でできるようになりました。
校正も、デザイン違いやレイアウト違いで、何パターンか初校の段階で提出することが可能になりました。

当時、一般的にはまだMacが普及していなかった為、全てが目新しいものでした。
ソフトのバージョンアップとオペレーターのスキルアップにより、仕事の内容も、DM・チラシ・ポスター・パンフレット・ページ物など、段々と版下作業からMacへ移行されていきました。

カラーものはMac、モノクロは電子組版・windowsというのが、当時の分担でした。

今や印刷業だけではない印刷会社

Macが導入されたことにより、版下からDTPへと、制作の作業工程は大きく変化してきました。
印刷工程でも、技術の進歩により印刷機の精度アップ・ハイスペック化が進み、品質向上・時間短縮・コストダウンなどに繋がりました。

ペーパーレス

しかし、何年も前から環境に配慮したペーパーレスが叫ばれ、印刷物を減らす方向へと世の中の動きは変化していきました。
会社案内が、PDFや電子ブックのデータ納品に切り替わり、チラシもWEB広告となり、手配りのクーポン券は電子クーポン券となり、印刷物の減少が加速化しています。

情報伝達ツール

印刷がすぐに無くなるものではないものの、やはり印刷物だけではなく、紙以外での情報伝達ツールが必要だと、当社も考えるようになりました。
2014年には社内に動画スタジオ「Cスクエア横浜」をオープンし、SNSやメルマガ・WEB販促などにも視野を広げ展開していきました。

ペーパーメディアとデジタルメディアの、クロスメディアな可能性を追求しながら、今日まで効果的な情報発信をお客さまとともに考えています。

オリジナル商品

印刷物は受注産業という側面もありますが、自社オリジナル商品の開発・販売も行っています。
企画から立ち上げ、市場調査・商品分析・デザイン~印刷・製品完成までを一貫して行い、展示会などでの出品や、自社サイトでの販売をしています。

WEBセミナー

また、WEBセミナーを開催して、お客さまの課題を一緒に解決する取り組みも行っています。
これからの時代は、世の中の変化・動向に対応した道を切り開かなければなりません。

以前開催したセミナー

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駆け足ではありましたが、約30年間の印刷業界の変遷を振り返ってみました。
こうしてみると、30年前には考えてもいなかった世界になっています。

ハード・ソフトの目まぐるしい進化。想像もしなかった技術の進歩。
手作業のアナログ時代を知っているからこそ、現在とのGAPの激しさが身に沁みます。
意外と変わっていないのは人間だけなのかも(?)しれません。

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