かなり古い話なので、ご存じの方は少ないと思います。常に変化し続ける街として日本だけでなく海外からも注目を集める渋谷ですが、1951(昭和26)年頃に、東横百貨店(後の東急東横店旧東館)と玉電ビル(後の東急東横店西館)のそれぞれの屋上を結んで「空中ケーブルカー」という名称のロープウェーが運転されていました。
「ロープウェー(Ropeway)」は索道(さくどう)と呼ばれる交通機関の一種。空中にワイヤロープを張り、ゴンドラを吊るして、人や貨物を輸送する設備です。たいがいは山間部や観光地に設置されているものが多いのですが、日本は世界でも特に数多くのロープウェーを有する国として知られています。
冒頭に70年近く前の渋谷の例を挙げたのは、都市部に設置されるロープウェーが時代に逆行しないのか、新しい都市型の公共輸送システムとしてうまくフィットするのか、という疑問を感じたから。
東京五輪を見据えて東京や福岡でロープウェーを設置するような構想が話題になっていましたが、最近あまり具体的なニュースを聞かなくなったので、その後どうなったのか進捗状況は不明です。
横浜のロープウェー「YOKOHAMA AIR CABIN(仮)」計画
そんな折、当社が拠点を置く横浜でロープウェー案が発表されました。
横浜市が募集していた「ヨコハマ都心臨海部のまちを楽しむ多彩な交通」に沿って提案されたロープウェー計画案が「YOKOHAMA AIR CABIN(仮)」。
計画は、JR桜木町駅の動く歩道のエスカレーター横から新港ふ頭の運河パーク駅舎まで約630m、通常、汽車道を歩いて徒歩10分ほどの距離を、片道約3分で空中散歩する想定。これによって桜木町駅前と「横浜ワールドポーターズ」や「横浜赤レンガ倉庫」がある新港地区一帯の賑わいの創出につなげるという狙いがあるようです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の営業開始を目指すそうです。
ちなみに、横浜には横浜駅東口から中央卸売市場、臨港パーク、パシフィコ横浜、新港ふ頭、赤レンガ倉庫、大さん橋、山下埠頭を結ぶ、もう一つのロープウェー案が存在しますが、今のところ具体的な計画は見えていません。
ロープウェーで思い出したのが1989(平成元)年に、横浜市制100周年、横浜港開港130年を記念して、横浜みなとみらい21地区で開催された「横浜博覧会(YES’89)」。横浜駅東口の横浜そごう2階のペデストリアンデッキから会場のゴンドラゲイトまでロープウェーを運行していました。設置費用がそれほどかからないために、短期間でも運用が可能ということでの設置だったと思います。
そんなことからも、どうしても遊園地のアトラクションや観光用のソリューション的な見方をされがちなロープウェーですが、海外を見てみると、ニューヨーク市マンハッタンの「ルーズベルト・アイランド・トラムウェイ」やロンドン、テムズ川の「エミレーツ・エア・ライン」など、街の一部になったロープウェーの例も多くあります。
違和感なく街の景観に溶け込み、空中交通としての役目を果たし、さらに街の活性化につながるのなら、横浜の計画も大歓迎。ロープウェーの建設、営業開始に期待感も高まります。