Vol.1 グラフィックデザインの始まり
印刷会社にもいろいろありますから、印刷だけを専門にしている会社もあれば、当社のように、印刷物の作成に欠かすことができないグラフィックデザインに力を入れている会社も多く存在します。とは言いつつも当社の約70年の歴史の中で、グラフィックデザインに力を注ぎ始めたのは約40年位前のこと。もちろん、それ以前からグラフィックデザインは存在していたわけで、その辺りを探るために表題の「グラフィックデザインの歴史を検証してみた」ということになりました。
最近はコンピュータの出現でグラフィックデザインもめまぐるしく変化していますが、どうせなら壮大な歴史を探ってみたいということで、3回程度に分けてお伝えしようと思います。
グラフィックデザインは印刷技術の歴史
一般的に印刷の起こりは、1445年頃。ドイツのグーテンベルグによる金属活字による活版印刷の開発とされています。しかし、それより遥か昔、紀元前4000年頃には、バビロニアで押圧印刷が始まっていますし、3500年頃のメソポタミア文明時のエジプトでは、水草パピルスの茎を加工して書写の材料にしたといわれています。その後も粘土板使った文書やシリンダー・シールと呼ばれる円筒形の印章などの使用も印刷の歴史に加えられています。
「グラフィックデザイン(Graphic Design)」の「Graphic」の語源は、ラテン語の「Graphicus」ギリシャ語の「Graphikos」。「書写、描画、図」という意味で、グラフィックデザインは平面上に図像を表すすべての表現技術ということになります。
2世紀頃に紙が中国で発明され、7世紀頃には木版印刷が確立しましたが、ヨーロッパでは15世紀前半にようやく紙に印刷された木版画や銅版画が出現。前記のグーテンベルグの活版印刷によって、ヨーロッパ全体に木版画や銅版画と組み合わせた印刷物が広まったといわれています。19世紀にリトグラフ(石版画)の技法や写真術が広がると、フランスを中心に絵と文字で構成した近代的なポスターが出現。18世紀中期から19世紀にかけて起こった産業革命により、商業広告の分野が発展し、グラフィックデザインの原型がこの時期にほぼ完成しました。
日本における印刷の歴史
奈良時代(8世紀中期)につくられた東大寺正倉院の「百万塔陀羅尼経」は、世界最古の印刷物として知られるように、中国から早い時期に木版印刷が伝わりました。江戸時代に風俗画として登場した浮世絵が18世紀には、木版多色刷りの浮世絵版画として黄金期を迎えます。
その後、現在のポスターや絵はがきのように江戸土産として好まれた浮世絵が、具体的な目的を持って制作されるようになります。江戸末期には百貨店の前身である呉服屋が宣伝に浮世絵を使用。化粧品の宣伝などにも使われるようになります。
日本において、商業美術的な意味合いのグラフィックデザインは、北斎や広重の名所絵も含めて、この頃が起源と考えられます。