安全標識のJIS(日本工業規格)を改正し、ユニバーサルデザインカラーを採用したというニュースが、経済産業省のホームページに掲載されました。
安全標識は、遠くからでも明確に「禁止」、「安全」などの指示内容が一目で認識できなければなりませんが、その認識性については、デザインはもちろん、色使いによって左右されます。
今回の改正は、国際基準との整合を保ちながら、多様な色覚を持つ人々の安全標識に対する認識性の向上を図ったもの。
色の組み合わせに対する認識性の調査により選定した「ユニバーサルデザインカラー」を採り入れた「JIS Z 9103(図記号-安全色及び安全標識-安全色の色度座標の範囲及び測定方法)」の改正が行われました。
改正の目的
人間の色の感じ方は一様ではなく、遺伝子のタイプやさまざまな目の疾患によって、色の見え方が一般の人と異なる人が多く存在します。
多様な色覚を持つ方々や、視力に障がいがあるロービジョンの方々、訪日外国人も含め、多くの人々の安全の確保及び利便性の向上が期待されるというのが今回の改正の目的と考えられます。
たとえば、お馴染みの非常口の標識。これまでは1型・2型色覚の人には緑色が灰色に感じられ、ロービジョンの人には青と見分けにくかったため、少し明るめのグリーンに。
電圧などの危険を示す黄色と黒の三角標識の地色の黄色が、これまで少し赤みがかっていたため、明度が低く、1型・2型色覚の人に、黄色に感じにくかったため、赤みを抜いて明度を上げました。
黄色に赤紫の絵柄の放射能標識は、2型色覚の人が赤紫を緑や灰色と見分けにくかったため青と見分けられる範囲で少し青みに寄せたようです。
他にも赤は少し黄色に寄せた朱色にしたり、色を明るめにしたりと微妙なことですが、安全の確保や利便性の向上が期待されるということです。
当社がより効果的に「伝える」ための付加価値として進める「MUD(メディア・ユニバーサル・デザイン)」について
ユニバーサルデザインは、このような情報・サインなどの他に、製品や施設などにおいて、さまざまな設計(デザイン)が誕生していますが、情報を扱う当社のような会社もユニバーサルデザインでとは強い関わりがあります。
当社で扱っている印刷物やサイン・Webなどの標示物においても、誰にでもわかりやすく伝えるために、文字や色の使い方、情報内容・情報伝達方法などに配慮しようという考え方である「MUD(メディア・ユニバーサル・デザイン)」を心がけています。
当社では、NPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会の会員企業としていち早くMUDサービスに着手。よりよい社会環境づくりを目的として、障がい者や高齢者、子どもや外国人など、誰にでも正しく情報を伝えるために、見やすく、読みやすく、使いやすい製品づくりを推進しています。
同協会が制定した「メディア・ユニバーサル・デザイン教育検定」にも現在、2級の「MUDディレクター」が5名、3級の「MUDアドバイザー」が45名認定されています。また、UCD(ユニバーサル コミュニケーション デザイン)」の普及活動を推進する一般社団法人UCDAの資格認定制度「UCDA資格認定2級」にも5名が認定されています。
MUDとは
MUD(メディア・ユニバーサル・デザイン)は、情報のユニバーサルデザインのこと。印刷物やサイン・Webなどの標示物を誰にでもわかりやすく伝えるために、文字や色の使い方、情報内容・情報伝達方法などに配慮しようという考え方です。超高齢化社会、インバウンド時代の到来が叫ばれる中、障害者差別解消法の施行なども相俟って、文化、言語、国籍、老若男女、障がいの有無を問わず正確な情報を得たいと望む社会が、MUDを必要としています。
なぜMUDは必要とされるか
超高齢化社会に向けて
超高齢社会に突入している日本では、人口の減少とともに高齢者数が増加し続けると見込まれており、2025年には65歳以上の高齢者が約30%に達するといわれています。加齢とともに視覚に不自由を生じている方々に対しては、より大きく、よりくっきりと見える文字や、可読性を重視した設計など、MUDによる配慮が必要です。
インバウンド(Inbound)時代に向けて
訪日外国人観光客が日本経済に大きな変化をもたらすといわれる「インバウンド時代」が到来。政府は、2020年の訪日外国人観光客数4,000万人超を目指しています。多くの外国人が観光を楽しむ中、観光、商業施設や公共施設などでは、文化、習慣の違いによるトラブルや、言語非対応による不便、機会損失という課題も浮上。さまざまな印刷物や看板などには、他言語翻訳を中心としたMUD対応が求められています。特に「東京2020オリンピック・パラリンピック」を控えて、コミュニケーション手段としてのピクトグラムを始め、MUDを配慮した情報伝達が必要不可欠となります。
子どもたちの活字離れが指摘される中で
テレビゲームや携帯電話、インターネットなどの普及が著しく進み、子どもたちを取り巻く環境も大きく変化。活字離れが指摘される中で、子どもたちに向けた印刷物もMUDの観点からの配慮がますます必要とされています。やさしくわかりやすい言葉で表現する、難しい漢字をにルビをふる、イラストや写真を多めに取り入れるなどの表現はもちろん、POPUPの技法を取り入れ誌面が飛び出したり動いたりするなど、子どもたちに驚きや楽しさを感じてもらえる工夫も求められています。
障害者差別解消法の施行を受けて
昨年4月から施行された「障害者差別解消法」では、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」が差別となりました。印刷物やサインなどにおいての「合理的な配慮」は、「見えない」「読めない」など、情報入手を妨げる要因を取り除く努力を促すもの。ロービジョンや色覚に障がいのある方も含めて、視覚に障がいを持っている方への情報伝達には今まで以上に工夫や配慮が必要となります。
当社は心づかいをカタチにしてお届けします。
企画・デザインサービス
当社では、受け手、読み手側に立場を最大限考慮した企画・デザインの作成を第一と考えています。色づかいや、フォント、レイアウトなどへの配慮・工夫はもちろん、環境配慮の印刷をはじめ、使う人、使われ方、作り方などすべてに、印刷会社の社会的責任として積極的にMUDに取り組んでいます。
MUD分析サービス
デザインは自分たちで作りたい、だけどMUDのことはよくわからない…。そんなお客さまのために、お客さまからご入稿いただいたデザインに対して、MUDアドバイザーによる分析、ご提案サービスを提供しています。
リ・デザインサービス
MUDディレクター、MUDアドバイザーがプロの視点でMUD仕様の「リ・デザイン」をご提案するサービスです。お客さまの訴求したいことや大切な情報を、受け手、読み手側の視点を配慮した最適なデザインでご提案。もちろんデザイン性も最優先。読みやすさを重視し過ぎるとデザイン性に欠けるのでは、という心配を一掃するデザインでお応えします。
クロスメディアサービス
タブレット端末やスマートフォンの急速な普及により、紙と電子の融合は不可欠となりました。当社では印刷物作成と同時に、音声や動画なども含めた「クロスメディア」提案も行っています。
障がい者対応サービス
視覚障がいのある方のためにSPコードによる音声での情報提供や、点字印刷のご提案も行っています。話し言葉によるコミュニケーションにバリアのある知的障がいや自閉症の方のために、わかりやすい表現で意思の疎通を図る「コミュニケーションボード」の作成も行っています。
MUDについての基礎知識(色覚)はこちらのページにまとめています。
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