初売りって?
年が押し迫ると必ず依頼される新年をテーマとした記事。今回は「初売り」をということで、今さら感は否めませんが、季節の風物詩としての「初売り」をきちんとチェックしてみようと思います。
「初売り」とは、ご存じのように、お店が新しく年を迎えて最初にものを売り出すことです。
俳句の新年の季語としても「初売り」「初買い」「初商」「売初め」「買初め」「初市」などがあり、年が明けて初めてものを売る日、買う日へのこだわりがあったことがうかがえます。
初売りの歴史は?
江戸時代、庶民は元旦を家で静かに過ごし、外へ出るのは商店が開く2日。もともと1月2日は「事始め」とされ、新年を迎えて初めての「事」を行うのに縁起の良い日とされてきました。当時日本橋にあった魚河岸は正月2日の初売りが恒例で、大勢の買い物客で賑わったといわれています。
歴史的な初売りとして特に知られているのは仙台藩で行われていた「仙台初売り」です。
初代藩主である伊達政宗は1584(天正12)年に父親の輝宗から家督を譲られた際に、伊達家の正月行事が記された『正月仕置之事』を与えられます。そのなかに1月2日に買い初め(初買い)をすることが書かれており、城下では初売りが年中行事になっていたと推測されます。
1804~1824年の文化文政年間に発行された 『仙台年中行事』という書物には「二日朝早くから店の格子戸を叩いて初売り初買い…」という記述が残っており、 当時すでに藩領内だけでなく広く藩外にも知られた行事であったことがうかがえます。
以来、長い伝統行事として伝わってきた「仙台初売り」の象徴として知られるのが、豪華景品。仙台商人の心意気を込めた商習慣は、公正取引委員会が限度額の特例を認めるほどの豪華さで、現在も国内外から注目を集めています。
初売りといえば「福袋」ですが、こちらも起源は江戸時代。日本橋の越後屋(現三越)が「恵比寿袋」として販売したのが最初といわれています。やがて福袋も含めた新春の「初売りセール」は小売店にとって大きなビジネスチャンスになっていきます。
時代で変わった初売りの時期
明治時代以降も初売りは1月2日が基本でしたが、初売りはその後、時代とともに変遷します。官公庁の業務が、正月三が日休日となると、百貨店を含む小売店の初売りが4日となり、さらに平成元年以降は、スーパーやコンビニエンスストアの出現とともに、小売業界での休業日数や営業時間の規制緩和が進み、3日から営業、2日から営業、元旦も営業という店舗が増加します。さらにここへきて店側のワークライフバランスを重視する流れのなかで、一部の小売店・百貨店で初売り時期を遅らせて3日や4日からの営業に戻す試みを行う百貨店・小売店なども現れています。
一年の計は“初売り(初買い)”にあり?!
印刷会社で仕事をする者としては、新春セールや福袋セールなど、ショッピングセンター、小売店のチラシなどを過去に手がけており、いかに多くのお客さまにご来店いただく印刷物を作り上げるかが、大きなテーマでありました。売る側の立場と来店するお客さまの立場を考えて暮れのうちはチラシづくりに励むのですが、毎年、年明けにはすっかり忘れて正月気分でいたため、自身で初売りを意識したことはありませんでした。しかも、これまで初売りで何を初買いしたかという記憶をたどっても、まったく思い浮かばない。もはや自身に対して「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱るしかありません。「一年の計は“初売り(初買い)”にあり」という言葉あるかどうかはわかりませんが、年の始めに買うものをしっかりと強い意識を持って決めようと、今さらながら思ったりしています。